著者
今村 正之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.365-373, 2010-03-05
参考文献数
27
被引用文献数
7

消化器神経内分泌腫瘍は比較的発生頻度が低く,各施設での経験数に限りがあるために診療の標準化が進まなかったが,近年の局在診断法の進歩にともない切除例が増加するに連れて,興味深い病態が解明されてきた.治療面の進歩も著しいものがあり,国際的な関心が高まりつつある.2003年にNETのWHO病理分類が改定され,またカルチノイドという消化管NETに与えられていた名称が消えた.新しい局在診断法として1987年に著者らが開発した選択的動脈内刺激薬注入法(SASI Test)とソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)が国際的に標準的診断法として普及しているが,SRSは本邦ではいまだに承認されず,診療上に支障が出ている.外科的&middot;内科的治療法の標準化に加えて,分子標的治療薬の治験が始まり,ソマトスタチン療法の進歩が患者に恩恵をもたらしつつある. <br>
著者
河本 泉 今村 正之
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-100, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
13

本邦では2015年4月に「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン 2015年第1版」が発刊された[1]。ガストリノーマの診断と治療に関してはCQ1-2「ガストリノーマをうたがう症状は何か?」,CQ3-2「ガストリノーマの手術適応と術式は?」,CQ4-2「十二指腸NETに対する内視鏡的治療の適応および推奨される手技は何か?」,CQ4-4「膵・消化管NETの内分泌症状に対して推奨される薬物療法は何か?」に記載されている。またガストリノーマは多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)に伴い発症することが多いこと,転移をきたすことが多く悪性度が高いことが知られており,ガイドラインにはMEN1に伴う膵・消化管NETの手術適応と術式,NET(G1/G2)に対して推奨される抗腫瘍薬についても記載されている。ガイドラインをもとにガストリノーマの診断と治療について解説を行う。
著者
橋本 充右 今村 正之 嶋田 裕 戸部 隆吉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.1924-1929, 1992-07-01
被引用文献数
18

胸部食道癌切除術前の胃と術後再建胃管の胃底部と前庭部の2点で24時間pHモニタリングを行った.全測定期間中pH頻度分布曲線を,1型(高酸型),2型(中間型),3型(低酸型),4型(前庭部高酸型)に分類し,各型群間で胃内酸度を術前後で比較検討した.深夜,食事中,食後の各期間pH中央値は各群間で特徴を有し,この分類法が酸分泌の解析上有用と考えられた.深夜胃底部pHは1,2型群で低値となり,1,2型群において,深夜胃底部pH中央値の平均,深夜胃底部pHが3以下となる時間の割合には術前後で有意差はなかった.術後長期経過例でも深夜胃底部は低pHを示す症例が多く,再建胃管の夜間酸分泌が保たれており消化性潰瘍発生に注意すべきと考えられた.また,術後1,2型群深夜前庭部のpHが3以下となる時間の割合と空腹時血清gastrin値の間の有意な逆相関(p<0.01)も証明された.