著者
今村 祐嗣 藤井 義久
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.61-69, 1995-03-25 (Released:2009-12-08)
参考文献数
9
被引用文献数
4 3

木材加害昆虫の摂食活動がアコースティック・エミッション(AE)の発生とリアルタイムに対応していることが明確になったので,この原理を用いてイエシロアリの食餌活動に伴う行動様式を追跡し,解析した。容器内に一定頭数のイエシロアリと木材を設置すると,試験開始後,数時間~数十時間でAE事象数は急増し,その後一定値まで低下するが,数日経過後再び上昇した。その後,この増減のリズムを繰り返した。兵蟻を全く移入しない場合,移入区より明らかにAE事象数は少なく,これに対応して木材の摂食量も少なかった。また,兵蟻の割合が標準より多い場合においても,AE事象数は少なくなったが,経過日数につれて増加し,この傾向は野外で採取したシロアリで著しかった。周囲の温度によって事象数は変化し,27℃付近より低下するにつれて減少し,12℃ではAEの発生は停止した。再び温度を上昇させるにしたがいAEの発生は増大し,さらに,試験を開始した27℃より上昇させると38℃付近までは増加する場合も認められるが,その後は一般的に減少し40℃を越えるとAEの発生は停止した。その後は,温度を下げてもAEは再び発生しなかった。また,イエシロアリの食害活動は明らかに光の照射によって影響を受け,AEの発生も一旦停止ないし低下した。しかし,その後時間の経過とともに光の照射下であっても食害活動は再び回復した。