著者
木村 幸 巨島 文子 植田 秀貴 今田 智美 倉智 雅子
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.S202-S206, 2010

前舌保持嚥下法 (Tongue-Hold Swallow : 以下 THS) は1996 年に Fujiu らによって嚥下咽頭期の嚥下圧生成源となる舌根部と咽頭後壁の接触不全に対し、咽頭後壁隆起を増大させる訓練法として提唱されたが、実際の訓練効果に関してはほとんど報告がない。今回われわれは、検査所見上、嚥下障害の問題の一つが咽頭期における舌根部と咽頭壁の接触不全による嚥下圧 (咽頭圧) 生成不足と考える症例に対して、THS のみを 3 カ月間施行した。訓練前後に嚥下造影検査を実施し、咽頭期における舌根部と咽頭壁の運動幅を測定した結果、舌根部と咽頭壁の接触不全が軽減された。THS は咽頭壁のみならず舌根部の後退運動を増大させる可能性が示唆された。