著者
太田 和樹 増谷 利博 今田 盛生
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.71, pp.p13-25, 1994-12
被引用文献数
3

九州大学宮崎演習林では細胞式皆伐作業法の適用により,天然生林からスギ・ヒノキ人工林への林種転換が行われてきたが,近年,シカの食害により不成績造林地が増加していることから,代替案を検討する必要に迫られている.そこで,代替案検討の第1ステップとして,対象天然林内に群状に分布するアカマツ混交林の取り扱い方を考えた場合,その林分構造について検討する必要がある.このようなことから,本報告は天然生アカマツ混交林の林型区分を行い,各林型ごとの特徴を明らかにすることを目的とし,径級別・樹種別の材積及び本数を変戯とするクラスター分析により林型区分を行い,類型化された林型の特徴を直径及び樹高の順位系列によって検討した.クラスター分析を行った結果,天然生アカマツ混交林内に設定した34のプロットは林型A~Hの8つの林型に分類された.次に,直径及び樹高順位系列を用いて各林型の林分構造の特徴を明らかにした結果,主に樹種構成,径級別本数及び材積で分類され,天然生アカマツ混交林の取り扱いについて検討を行うための林型区分として適切であった.さらに,林型ごとに今後の取り扱いについて検討した結果,林型G,Hで木材生産が可能であるが,林型A,Bでは不可能であることが明らかになった.その他の林塾では,伐採後の成林の問題もしくは経済性の問題についてさらに検討する必要があることが示唆された.
著者
今田 盛生
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.81-225, 1972-03
被引用文献数
7

本論文は,ミズナラ構造材林の造成を対象とした作業法に関する理論的研究および実証的研究を試みたものである。 まず,ミズナラの構造材林造成上考慮すべき樹性およびミズナラ構造用素材に要求される形質を検討して,それにもとづきミズナラ構造材林の育林技術上の基本的要件を明らかにした。それはつぎのとおりである。 1) 更新期において,密立更新樹を確保すること。 2) 稚幼期において,上層林冠を単層一斉状態に構成すること。 3) 壮令期以後において,上層間伐を採用することにより,肥大生長を促進すること。 4) 収穫期において,長伐期を採用することにより,高令・大径林を造成すること。 ついで,作業法に関する理論的研究を行ない,基本的要件とミズナラの構造材林の作業法に関連する特性にもとづき,各種の作業法について,主として育林技術上の観点から,ミズナラ構造材林造成に対する適用性を検討し,理論上の適用段階における基本的作業法は,伐採木自身からの落下種子を活用する皆伐天然下種更新法であることを明らかにした。その作業法の単位林分に対する適用の基本方式はつぎのとおりである。すなわち,150年生の伐期に達したミズナラ林を対象として,その林分の結実豊作年秋の種子落下後冬期間内に,ミズナラ上木を皆伐し,その伐採木(主伐木)自身からの落下種子を活用して,その皆伐跡地に翌春ただちにミズナラ稚苗を発生させて更新を完了する方法である。 さらに,作業法に関する実証的研究を,基礎研究と応用研究に分けて現実の林地で実行した。前者の基礎研究においては,ミズナラの作業法に関連する特性,すなわちミズナラの林分結実量・発芽・種子散布・上木庇陰下における稚苗の生育状態・稚苗の根系・稚幼期の密立林分における優勢木の生育状態・林分の生長推移を明らかにし,育林技術上の観点から考察したが,その結果はつぎのとおりである。 1) ミズナラの結実豊作年の伐期林分で生産される多量の種子を適切に活用すれば,天然下種更新法により,ミズナラの密立更新樹を確保することは可能である。 2) ミズナラの構造材林造成に,側方天然下種更新法・漸伐天然下種更新法・択伐天然下種更新法を適用することは困難である。 3) ミズナラを人工植栽する場合には,直根性の自然の根系(写真-3・1~3・4)をなるべくくずさないような方法を用いるべきである。 4) ミズナラは,密立一斉林分からでも優勢木が発生し,しかもその樹高生長力は大きく低下しないという樹陛をもっているから,密立単層一斉林を構成することは,育林技術上支障を生じる危険性は小さい。 5) ミズナラの構造材林造成を対象とした場合,更新当初における必要最少限の稚苗発生密度はha当り10万本,また更新完了後5年目における必要最少限の稚樹成立密度はha当り3万本であると推定される。 6) 上層間伐は,主伐候補木の平均枝下高が7mに達する35年生林分から開始すべきである。 7) 主伐期の単位林分における林分構成および収穫材の目標は表-3・21のとおりである。 後者の応用研究においては,基本的作業法を単位林分に適用する場合に必要な育林手段は,施行順にあげると,下種地拵・補播・種子覆土・更新伐・枝条整理・補植・稚樹刈出・除伐・枝打・間伐であることを明らかにし,それらの育林手段のそれぞれについて,補播および補植を除いて,現実の林地で試験した。その試験結果にもとついて,それらの個々の育林手段の体系化を試み,基本的作業法の単位林分に対する適用方法の基準は表-4・1に示すとおりであることを明らかにした。 以上の研究結果を総括して,ミズナラの構造材林造成を対象とした作業法は,その適用林の単位林分に対して,150年伐期により,表-3・21に示した林分構成および収穫材を目標として,表-4・1に示した育林技術を適用する生産方式であることを明らかにした。さらに,この作業法の特性にもとついて,総括的考察を試みた結果,この基本的作業法が適用された全林を組織化する場合には,単位林分の面積をなるべく小さくし,しかもその単位林分を逐次隣接させず,林道網整備を先行させて分散させるべきであるとともに,この作業法は大規模林業経営体に適用される可能性が大きいものと認められた。