著者
若松 美智子 佐野 遙 伊藤 亜希子 中村 和子 松倉 節子 蒲原 毅
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.160-163, 2020-02-01

64歳,女性。初診時,右拇指に爪甲の肥厚,粗糙化,破壊と爪甲下の膿疱が認められた。病理組織学的にKogoj海綿状膿疱がみられたが,当初は皮膚カンジダ症が合併していたことなど,診断に苦慮した。無菌性膿疱が慢性に繰り返してみられたこと,再度皮膚生検を施行し病理組織学的にKogoj海綿状膿疱が確認できたことからHallopeau稽留性肢端皮膚炎と診断することができた。エトレチナート20mg/日内服で膿疱は速やかに消失し,ほぼ正常な爪甲の再生がみられた。これまでエトレチナート減量や中止で汎発化した既報告例が散見されるため,今後も注意深い経過観察が必要であると考えられた。
著者
原田 晋 森山 達哉 上塚 弘
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1257-1262, 2019-07-01

25歳,女性。過去に数回,ウズラの卵摂取後に発熱・咽喉異和感・全身のしびれ感・呼吸困難などのアナフィラキシー症状を発症した。プリックテストで,ウズラの卵の卵白・卵黄ともに(4+)陽性であったため,自験例をウズラの卵によるアレルギーと診断した。ただし,鶏卵の摂取は日常的に可能であり,また鶏卵の卵白・卵黄の特異的IgEおよびプリックテストはともに陰性かつImmuno Solid-phase Allergen Chipで鶏卵の主要アレルゲンコンポーネントもすべて陰性であったことより,鶏卵に対する感作は有していないと考えた。鶏卵との交叉反応性を示さないウズラの卵による即時型アレルギーの報告は過去に数例しか認めておらず,極めてまれである。
著者
河端 由佳 狩野 俊幸 浅見 暁子 古田 淳一
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1926-1929, 2016-12-01

61歳女性。15年前より躯幹や四肢にそう痒を伴う紅色丘疹が出現し、春と夏には掌蹠にそう痒さを伴う漿液性丘疹が出現するようになった。受診時、汗疱状湿疹が遷延する臨床像と大豆の多量摂取歴から全身型金属アレルギーが疑われた。金属パッチテストでは亜鉛と白金が+?(ICDRG基準)であった。多量に摂取していた大豆を1ヵ月間制限したところ、掌蹠や躯幹、四肢の皮疹は軽快した。軽快後、ポラプレジンクの内服による亜鉛負荷試験を実施したところ、亜鉛による全身型金属アレルギーと診断された。管理栄養士の協力を得て、亜鉛摂取を控えるよう指導し、皮疹は寛解した。
著者
結城 明彦 高塚 純子 竹之内 辰也
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.609-612, 2016-04-01

症例1は36歳女性で、6日前、右足底の色素斑を自覚した。色素斑は15×10mm大で、色調は褐色から橙色調で色素分布は均一で、左右対称、境界不明瞭、そう痒などの症状はなく無症候性であった。アルコール綿で拭っても脱色はみられず、ダーモスコピー所見で皮丘平行パターン(PRP)を認めた。早期の悪性黒色腫(MIS)と診断し、切除と植皮による再検を予定したが、初診8日後の入院時、色素斑は顕著に消退し生検のみで退院した。退院10日後の再診時に色素斑は完全に消退した。症例2は64歳女性で、2日前、左足底の色素斑を自覚した。色素斑は6×5mm大で、色調は赤みを帯びた橙色調で色素分布は均一で、左右対称、境界不明瞭、無症候性であった。アルコール綿で拭っても脱色はみられず、ダーモスコピー所見は特定のパターンは認めなかった。血腫疑いの臨床診断で、経過観察となった。23日後の再診時に色素斑はほぼ消失し、以後、有事再診としたが受診はなかった。カメムシ皮膚炎は虫体が分泌するヘキセナールなどアルデヒドの浸潤により発症するが足底では浸潤が角層内に留まるため炎症所見を欠き、色素沈着のみを呈する。両例は症状が似ておりカメムシが原因である可能性が推定され、原因不明の足底色素斑をみた場合はカメムシによる色素斑も鑑別の一つに挙げるべきと思われた。
著者
小幡 祥子 海老原 全
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.912-914, 2019-05-31

最新の知識◆近年,アトピー性皮膚炎の病態への皮膚微生物叢の関与が指摘され,黄色ブドウ球菌に対する静菌的治療が再注目されている。◆ブリーチバス療法のエビデンスが集積されるに従い,欧米の主要なアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも推奨されており,今後国内のアトピー性皮膚炎患者の関心も高まると予想される。
著者
飯島 孝四郎 伊藤 理恵
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.123-126, 2021-01-01

35歳,男性。8月下旬,栃木県の湿地滞にてヤマビルに両下腿を吸血された。その12日後より,前腕,背部,大腿部に多形紅斑が出現した。発熱などの全身症状は伴わなかった。ステロイド軟膏を外用し,消退した。ヒル咬傷自体は一般的な吸血害虫被害であるが,咬傷部位は容易に治癒し,その合併症もほとんどないことから医療機関を受診することは少ない。本邦においてヒル咬傷による多形紅斑を生じた症例は自験例のみであり,非常にまれな症例と思われた。しかし,昨今の地球温暖化や各地で頻発する水害によりヒル生息域の拡大が懸念されており,今後,多形紅斑以外にも多彩な皮膚症状を呈するヒル咬傷の症例が増加する恐れもある。
著者
志貴 美麗 遠藤 元宏 大江 真司
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.176-179, 2016-02-01

82歳女。数年前より限局皮膚硬化型強皮症に対してプレドニゾロン、抗血栓薬内服による加療中であった。2013年10月、右第1趾化膿性爪囲炎のため当科を初診し、側爪郭にコットンパッキングを施行し、抗菌薬の内服を開始したが徐々に潰瘍化し、周囲に紫斑が拡大したため、11月入院となった。採血にてCRP高値を認めたため、抗菌薬の内服を継続し、足趾の潰瘍にはトラフェルミンスプレーとアルプロスタジル、アルファデクス軟膏の外用、血管拡張剤の点滴を開始した。しかし、潰瘍は黒色化し、間質性肺炎の悪化、MRSA肺炎・心不全を併発し、12月に死亡した。
著者
西村 みずき 川瀬 正昭 江藤 隆史
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1651-1655, 2016-10-01

症例1(56歳女性)。2年前より左中指遠位指節間関節(DIP)に10mm大の単発性角化性結節が出現した。症例2(39歳女性)。3年前より左示指に4mm大の単発性角化性結節が出現した。症例3(51歳男性)。2年前より左足底に15mm大の類円形角化性局面が出現した。いずれの症例も他院にて尋常性疣贅と診断され、液体窒素療法などの治療を受けるも無効で、著者らの皮膚科へ紹介となった。治療として削り処置、液体窒素療法のルーチン処置に加え、ビタミンD3軟膏-50%サリチル酸ワセリン絆創膏連結療法が行われたが効果は乏しく、モノクロロ酢酸塗布療法に変更した結果、治療開始3~6ヵ月で病変の消失がみられた。
著者
原田 晋 森山 達哉 谷口 雅輝 森岡 芳雄
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1283-1288, 2017-07-01

64歳,女性。健康食品として春ウコン粉末を初めて服用した直後よりアナフィラキシー症状が出現。プリックテストで秋ウコンのターメリックは陰性であったが,春ウコンが陽性であったことより,春ウコンアレルギーと診断した。ウコンアレルギーの既報告は接触皮膚炎や多発性固定薬疹など遅延型アレルギーの機序に基づく症例が大部分で,即時型アレルギーの既報告は接触蕁麻疹症例のみであり,自験例はウコン摂取によりアナフィラキシーをきたした世界初の報告と考えた。また,既報告では同定し得た症例のほぼ全例で,秋ウコン中の主成分であるクルクミンが原因抗原であったが,自験例ではクルクミン以外の抗原が原因抗原である可能性が考えられた。
著者
原田 晋 佐々木 和実
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.371-376, 2018-03-01

36歳,女性,美容師。毛染めブリーチの使用直後に全身性のアナフィラキシー症状が出現した。プリックテストで毛染めブリーチ中に含まれている過硫酸塩が陽性を示したため,自験例を同剤によるアナフィラキシーと診断した。過硫酸塩は,遅延型アレルギーによる接触皮膚炎および即時型アレルギーでは吸入による喘息症状をきたしやすいことが知られているが,即時型反応の機序で接触により生じる接触蕁麻疹ないしアナフィラキシーの報告は少なく,とりわけ日本人における発症はまれである。しかし本邦でも,毛染めブリーチ剤の使用によって過硫酸塩による接触蕁麻疹ないしアナフィラキシーがおこりうることに留意するべきである。