著者
谷 亜希子 川瀬 友貴 仲江川 雄太 多田 靖宏
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.7-12, 2018-02-10 (Released:2018-02-25)
参考文献数
8

気管孔レティナは気管切開後の気管孔保持のために使用される。気管カニューレに比較し気管内腔への刺激が少ないこと,交換頻度が少なくて済むこと,ベルトでの固定が不要であることが利点である。今回,当科において気管孔レティナを使用している42例を対象に,レティナ管理の経過,合併症について評価した。男性23名,女性19名,レティナ使用開始時の年齢は11~83歳 (平均55.6歳) 。気管切開が必要となった原因は両声帯麻痺,気管狭窄症,喉頭腫瘍による気道狭窄,誤嚥防止手術後であり,レティナの使用期間は1~400カ月 (中央値18.5カ月) に及んだ。経過の中でレティナ使用を継続している症例は45.2%,気管孔閉鎖が得られた症例は33.3%,カニューレによる気管孔管理に変更された症例は19.0%,喉頭摘出のため永久気管孔を行った症例は2.4%であった。合併症は気管切開孔周囲の肉芽が16.7%,繰り返す脱落が14.3%,気管内腔側壁の瘢痕形成が9.5%であった。なかでも気管内腔側壁の瘢痕形成はレティナ使用による特異的な合併症と思われた。レティナには先に述べた利点があるが,合併症,特にレティナ脱落に対する理解と対応が必要である。定期的な観察と適切な対応を行えば多くの患者に安全な気道管理法と考える。