- 著者
-
花村 克悟
伊原 学
- 出版者
- 東京工業大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究は、様々な熱源によって加熱された赤外線放射体表面近傍に生ずる近接場光領域に、真空ナノスケール隙間(ナノギャップ)を隔てて熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Ce11;TPV Cell)を向かい合わせ設置し、その領域の高電界強度を利用することで高い発電密度を得ようとするものである娘まず、既存のTPV電池(フラウンホーファー研究所製)を用いて実験した。その表面には高ざ4μm、幅20岬の金電極が60μmのピッチで配置されている。そこで、接触を避けるためにタングステン放射体表面には溝が設けてある。長さ8mm、幅2mmの放射体表面を、高精度マイクロメーターにより近づけた場合、50μm以下の隙間では形態係数がほぼ1となり、それ以下に近づけても伝播成分の範囲では出力は増大しない。しかし、隙間が.1μm以下となると、短絡電流が4倍、開放電圧が1.4倍増大した。すなわち近接場効果により出力は5〜6倍に増大することが明確となった。さらに、この電極間隔を拡げる、あるいは、P型半導体内部に電極を埋め込んだ独自のGaSb系のTPV電池を、ロードロックチャンバーを接続した簡易薄膜装置により製作を試みた。n型GaSb系基盤上にp.型GaSb半導体をエピタキシャル成長させることに成功し、アンドープでありながら、p-n接合であることが確認でき、キャリア密度5.73×10^<17>cm^<-3>と.モビリティ1.35×10^2cm^2/Vsを得た。一方、GaSb系のTPV電池は、波長1.8μm以下の電磁波を電力に変換できるが、それより長い波長の電磁波を電力に変換できない。そこで、金属放射体表面にナノスケールのキャビテーを多数設け、光導波管の原理により放射光の波長選択を試みた。表面研磨されたNi表面の2mm×2mm'の領域に、縦横500nm四方、深さ500nmのキャビテーが幅250nmの壁を隔てて周期的的に作製されている表面を用意した。このサンプルを真空容器内に入れて裏面から炭酸ガスレーザーにより1052Kまで加熱した。分光測定の結果、波長が2μm以上ではNiの鏡面の放射率にほぼ等しく、それより波長が短くなると徐々に増大し、キャビテー幅が半波長に等しい波長1μmよりやや短い波長の放射率が0.95と極めて高くなることが明らかとなった。これらの組合せにより、選択波長近接場光を用いた新たなエネルギー変換が構築できることの手がかりを掴むことができた。