著者
安元 健 伊藤 志保美 浮穴 学宗 ツインゴーネ アドリアーナ ロッシ ラケーレ ソプラノ ビットリオ
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2018-07-19

<p>腔腸動物スナギンチャク(Palythoa spp.)から発見されたパリトキシン(palytoxin,PLTx)と同族体は複雑な構造と強力な毒性を持つ<sup>1</sup>。演者ら(TY,TU))は底生渦鞭毛藻Ostreopsis siamensisから42-hydroxy-3,26-didemethyl-19,44-dideoxypalytoxinを単離決定し,最近,LC-QTOF を使用して伊計島産O. cf. ovata 中のovatoxin-a,-d,-e(IK2) の新規構造を推定した<sup>2,3</sup>。一方,Ciminielloらは地中海産Ostreopsis cf. ovata から単離したovatoxin-aの構造を42-hydroxy-17,44,64-trideoxypalytoxinと決定した<sup>4</sup>。本研究はLC-MSを用いてPLTx類縁体の高感度・迅速構造解析法を開発して化学構造と分布の多様性,生合成解明,安全性監視への端緒とすることを目的とした。</p><p>[方法] スペクトル測定はLC(ESI)-TOFMS(Agilent Technology)を用いて正・負両モードで行い,質量100~3000の範囲のイオンを抽出した。本文中のm/zは小数点以下を省略してある。LCは移動相に0.1%ギ酸/MeCNによる勾配法を用いた。PLTxは市販品を使用し,混在するpalytoxin carboxylic acid(PLTxCOOH)とpalytoxin amide (PLTx-NH<sub>2</sub>)も対象とした。渦鞭毛試料はナポリ湾産O. cf. ovata (AZ株)の培養藻体をMeOHで抽出して使用した。誤差の許容値は10ppmとした。</p><p>[パリトキシンの正イオンスペクトル] フラグメントイオンは生成機構に基づいて3型に分類された。第一は115-NH<sub>2</sub>に電荷を有し,チャージリモートフラグメンテーションで生じる(Fig.1)。C79-C81-triol周辺の開裂と脱水で生じるイオン(m/z744,726,708,804,798,768)はPLTx同族体に特徴的である<sup>2</sup>。m/z916とその脱水イオンは73-OHの存在を示し,天然同族体73-deoxypalytoxinとの区別に役立つ。F環の開裂で生じるイオン群は,70-deoxy の推定構造を持つovatoxin-a-IK2との区別に役立つ。その他の主要なC-C結合の開裂位置も図中に示す。結合が切断されて生じる最初のモノエンのイオンは観測されず,共役が進行してトリエン以上になって観測される。水酸基の位置が適切でなければ脱水による共役は進行せず,イオンの確実な同定を可能とする。第二のグループはC1に結合した末端構造(A1+A2)中のアミド窒素が正電荷を担うと推定され,C8'からC11に至る部分構造の情報を与える(Fig.2)。末端の3-aminopropanol(A1)が脱落したm/z740のイオンは,dioxabicyclononane環の存在と位置を示す唯一のイオンである。開裂箇所のC28-C29結合の近傍に水酸基が存在しないので,脱水による共役化が進行せず,イオン強度が低い。第三のグループは炭素結合が2か所で同時に開裂し,その後の脱水によって生じた共役ポリエンである(Fig.3, 4)。A環とD環周辺の開裂の組み合わせによって多様なイオンが生成し,水酸基の情報を与える。例えば炭素数39の共役ポリエンでは水酸基5個の脱離で生成する。C41-C46間の水酸基は4個だけなので脱水は13-OHから20-OHに向けて進行している。</p><p>[パリトキシンの負イオンスペクトル] 第一のグループはD環周辺の開裂によって生じ,C1に結合した末端アミド構造は保持されている。第二グループは115-NH<sub>2</sub>を有し,鎖長が長くて水酸基(酸素原子)の数が増加すると観測される。第三グループのフラグメントm/z947ではC1-アミドが開裂してアルドヒドを生成したと推定さ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
伊藤 志保 藤原 淳 趙 崇至
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.096-100, 2013 (Released:2013-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1

頚部悪性腫瘍の気管浸潤や,頚部膿瘍,急性喉頭蓋炎による呼吸困難に対して,ECMO補助下に気管切開術の麻酔管理を安全に行った.高度気道狭窄を伴う症例の全身麻酔下での気管切開術は,麻酔導入時に容易に気道閉塞を起こす可能性がある.このため,慎重な気道確保が必要であり可能な場合はECMO補助下での気道確保を考慮すべきであると考える.