著者
仲澤 宏 伊藤 良樹 谷 健二 板本 和仁 土橋 英理 原口 友也 田浦 保穂 中市 統三
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.29-34, 2011 (Released:2012-04-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

11歳の雌の柴犬が2ヵ月前からの頻回の嘔吐を主訴に当院を紹介来院した。初診時、ボディコンディションスコア(BCS):3/9、X線CT検査において胃の拡張と幽門部の胃壁の肥厚、内視鏡検査において幽門部の腫瘤病変が認められ、内視鏡下生検では胃腺癌が強く疑われた。内科的な入院管理の後、幽門部の腫瘤を含む遠位約1/3の胃と十二指腸を約1.5 cm切除し、ビルロート II法による消化管の再建を行った。手術によって摘出した腫瘤の病理組織学的診断は胃腺癌であった。症例は術後合併症や再発の兆候もなく、術後約7ヵ月の現在も良好に維持されており、QOLの向上のためにも、転移を示唆する所見がない症例では積極的な切除を試みることが重要であると考えられた。