著者
伊藤 貢
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.63, pp.17-21, 2014-02

動物用医薬品、特に抗菌剤の使用は、人における耐性菌出現の問題、食の安全を脅かす問題として、注目されている。欧州では2006年に成長促進の目的での抗菌剤の飼料添加を全面的に禁止しているが、デンマークに於いては、1995年から生産者が中心となって抗菌剤の使用の適正化を自主的に行っている。その後、政府が中心となって、抗菌剤の使用をデータベース化して、使用状況を把握し、農場毎に抗菌剤の使用量の規定値を設け、それを越えた農場に対して警告、罰則を与える、いわゆるイエローカード、レッドカード制度を導入して、適正使用を進めている。また、米国に於いては、酪農の分野ではあるが、乳房炎治療薬において、セフェム系抗菌剤の使用が禁止されている。このように、畜産先進国では、抗菌剤の使用の制限が、飼養管理に大きく影響を与えており、生産現場では疾病対策に苦慮している面もある。日本の畜産に於いても、これから抗菌剤の適正使用・慎重使用に向けた取り組みが進むと思われるが、現状では養豚管理獣医師が不足傾向にあるため、疾病の対応において、生産者の経験やディーラーが相談に乗るケースもあり、抗菌剤の適正使用・慎重使用の導入は急務な課題であると思われる。本稿では、筆者が開発した指示書発行システムのソフトを使用している診療所のデータを集計解析し、我が国の養豚場における抗菌剤使用の実情を紹介する。加えて、当診療所が行っている動物用医薬品の適正使用・慎重使用に向けた取り組みを紹介する。
著者
加藤 敏英 矢田谷 健 石崎 孝久 伊藤 貢 小田 憲司 平山 紀夫
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.127-130, 2008 (Released:2011-01-19)

トルアジン誘導体であるトルトラズリルの牛コクシジウム病発症予防効果および安全性を調べることを目的に、168頭の子牛を用いて投与試験を実施した。その結果、有効性試験(n=134)では薬剤投与群(n=67)の発症率(0%)が無投与対照群(n=67)のそれ(38.8%)に比べ有意に低かった(P<0.01)。また、薬剤投与群のオーシスト排泄率およびOPG値は投与後4週までは無投与対照群に比べ有意に低く(P<0.01)、便性状や下痢便排泄率でも顕著な差が認められた。いっぽう、安全性試験(n=168)では薬剤投与群(n=84)と無投与対照群(n=84)でそれぞれ19.0%、26.2%の個体に呼吸器症状がみられたが、薬剤投与に起因する有害事象はみられなかった。以上のことから、トルトラズリル5%経口液は牛コクシジウム病発症を抑え、臨床的に有用性が高い薬剤であることがわかった。