著者
北野 良夫
出版者
日本豚病研究会
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-8, 2014 (Released:2014-10-28)
著者
伊藤 貢
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.63, pp.17-21, 2014-02

動物用医薬品、特に抗菌剤の使用は、人における耐性菌出現の問題、食の安全を脅かす問題として、注目されている。欧州では2006年に成長促進の目的での抗菌剤の飼料添加を全面的に禁止しているが、デンマークに於いては、1995年から生産者が中心となって抗菌剤の使用の適正化を自主的に行っている。その後、政府が中心となって、抗菌剤の使用をデータベース化して、使用状況を把握し、農場毎に抗菌剤の使用量の規定値を設け、それを越えた農場に対して警告、罰則を与える、いわゆるイエローカード、レッドカード制度を導入して、適正使用を進めている。また、米国に於いては、酪農の分野ではあるが、乳房炎治療薬において、セフェム系抗菌剤の使用が禁止されている。このように、畜産先進国では、抗菌剤の使用の制限が、飼養管理に大きく影響を与えており、生産現場では疾病対策に苦慮している面もある。日本の畜産に於いても、これから抗菌剤の適正使用・慎重使用に向けた取り組みが進むと思われるが、現状では養豚管理獣医師が不足傾向にあるため、疾病の対応において、生産者の経験やディーラーが相談に乗るケースもあり、抗菌剤の適正使用・慎重使用の導入は急務な課題であると思われる。本稿では、筆者が開発した指示書発行システムのソフトを使用している診療所のデータを集計解析し、我が国の養豚場における抗菌剤使用の実情を紹介する。加えて、当診療所が行っている動物用医薬品の適正使用・慎重使用に向けた取り組みを紹介する。
著者
神谷 亘
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.66, pp.1-4, 2015-08

コロナウイルスは、RNAをそのウイルスゲノムとして持つエンベロープウイルスである。コロナウイルスはニドウイルス目に分類され、その中にコロナウイルス科、そして、コロナウイルス亜科とトロウイルス亜科に分類される。コロナウイルス亜科はさらに、アルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属の3つの属に分類される。アルファコロナウイルス属には、ヒトコロナウイルス229Eや豚流行性下痢ウイルスなどが含まれる。ベータコロナウイルス属には、2002年度に流行した重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome: SARS)コロナウイルスが含まれる。また、SARSコロナウイルスの発生から、おおよそ10年後の2012年度より中東で感染が拡がっている、中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome: MERS)コロナウイルスなどが含まれる。ガンマコロナウイルス属には、主に鳥類由来のコロナウイルスが含まれる。ヒトにおいて、コロナウイルス感染症は、SARSコロナウイルスの発生以前では、風邪の原因ウイルスの1つとして考えられており、強い病原性を示すウイルス感染症ではなかった。そのため、SARSコロナウイルス発生以前のコロナウイルス研究はマウス肝炎ウイルスの研究が牽引してきた。一方、獣医学領域においては、牛コロナウイルス、猫コロナウイルス、犬コロナウイルスなどそれぞれの動物種で固有のコロナウイルスが存在している。また、豚流行性下痢ウイルスも重要なウイルス感染症の1つであり、最近では2013年より日本国内において発生している。コロナウイルスのウイルス学的特徴は、ウイルス粒子表面に特徴的な王冠様の構造物(スパイクタンパク質)が存在することであり、このウイルス粒子の外殻構造がコロナウイルスの由来である。コロナウイルスのウイルス粒子は主に3つの構造タンパク質(Sタンパク質、Mタンパク質、Eタンパク質)から構成されており、その中に、おおよそ30,000塩基のRNAがウイルスゲノムとして取り込まれている。このウイルスゲノムは、RNAウイルスの中で最長であり、これがコロナウイルスの1つの特徴である。しかしながら、このように長いウイルスRNAゲノムを有するため、他のRNAウイルスで用いられている逆遺伝子操作系の取り扱いが非常に複雑で煩雑である。そのため、コロナウイルスの分子ウイルス学的な解析は、他のRNAウイルスに比べて遅れているように思われる。
著者
武田 浩輝
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.65, pp.41-43, 2015-02

平成26年5月20日東北地方の一貫生産農場において豚流行性下痢(PED)の発生を経験した。このPEDの発生に関し、農場管理獣医師として農場主と協議し、獣医師としての責任の下、農場内におけるすべてのPEDの対応に関する委任を受け、農場内において陣頭指揮を執り、管内の家畜保健衛生所との連携、発症時の農場内における初動対応および発症後の管理指導、計画的自然感染(馴致)等を実施した。PED発生による哺乳子豚の死亡は10日間でほぼ終息し、6月13日以降、下痢や食欲不振などのPEDの臨床症状および死亡が確認されず、6月26日に家畜保健衛生所より豚および物品の移動自粛の解除の通知を受けたので、この事例に関して報告をする。
著者
北野 良夫
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-8, 2014-08

我が国においては、1996年から「豚コレラ清浄化5カ年計画」が本格的に開始された。この計画は、まず豚コレラGP生ワクチンの徹底接種することにより群免疫を高めて、野外ウイルスを排除することから始められ、その後にいのししを含めた豚の抗体検査により感染の有無などの実態調査を行いながら、徐々にワクチン接種を中止していくものである。2000年にはワクチン使用が原則中止され、一部都道府県知事の許可に基づき使用されていた同ワクチンの接種も徐々に中止され、2006年4月には全面中止となり、最終的にOIE規約に基づき2007年4月に「豚コレラ清浄国」となった。豚コレラ清浄国へ向けたこのような動きの中で、2004年、我が国屈指の養豚県である鹿児島県において5事例の豚コレラ疑似患畜が確認された。この発生に伴う一連の防疫活動においては、緊急ワクチン接種の強い要請があった中、西欧諸国と同様に、ワクチン接種を行わず、感染豚の摘発と淘汰及び飼養衛生管理基準の遵守により防圧された我が国初のケースとなった。
著者
山田 俊治
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 = Proceedings of the Japanese Pig Veterinary Society (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.52, pp.22-28, 2008-02-01
参考文献数
7

養豚界での最大の疾病である豚コレラは、平成18年3月31日の農林水産大臣による「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」の公表によって予防的ワクチンが事実上禁止され、国際獣疫事務局(OIE)規定に基づき翌平成19年4月1日に豚コレラ清浄国となった。本稿ではオーエスキー病の特徴を改めて述べつつオーエスキー病の現状を紹介し、生産関係者を含め養豚に関わる方々に対して本病撲滅の意義をイメージしていただければ幸いである。
著者
北野 良夫
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-8, 2014-08

我が国においては、1996年から「豚コレラ清浄化5カ年計画」が本格的に開始された。この計画は、まず豚コレラGP生ワクチンの徹底接種することにより群免疫を高めて、野外ウイルスを排除することから始められ、その後にいのししを含めた豚の抗体検査により感染の有無などの実態調査を行いながら、徐々にワクチン接種を中止していくものである。2000年にはワクチン使用が原則中止され、一部都道府県知事の許可に基づき使用されていた同ワクチンの接種も徐々に中止され、2006年4月には全面中止となり、最終的にOIE規約に基づき2007年4月に「豚コレラ清浄国」となった。豚コレラ清浄国へ向けたこのような動きの中で、2004年、我が国屈指の養豚県である鹿児島県において5事例の豚コレラ疑似患畜が確認された。この発生に伴う一連の防疫活動においては、緊急ワクチン接種の強い要請があった中、西欧諸国と同様に、ワクチン接種を行わず、感染豚の摘発と淘汰及び飼養衛生管理基準の遵守により防圧された我が国初のケースとなった。
著者
井上 剛光 岸 雅恵
出版者
日本豚病研究会
雑誌
日本豚病研究会報 = Proceedings of the Japanese Pig Veterinary Society (ISSN:09143017)
巻号頁・発行日
no.53, pp.21-25, 2008-08-01

Fort Dodge Animal Health社Suvaxyn(R) PCV2 One Doseの海外における評価成績。Suvaxyn(R)PCV2 One Doseは2種類の関連した豚サーコウイルスを用いて特異的に作製されたワクチンである。野外の大部分の豚は、豚サーコウイルスタイプ1(PCV1)およびタイプ2(PCV2)の両方に自然感染する。PCV1は20年以上前に分離され、豚では非病原性であることが知られている。一方、PCV2は引き金になる関連因子(重感染またはある種の免疫刺激のような)が組み合わさると、重篤な症状を引き起こし、感染豚の免疫機能の低下・不全、あるいは死亡をもたらす。非病原性のPCV1と病原性の強いPCV2は高い遺伝的相同性(ヌクレオチド配列)を有しており、ゲノム構造の約75%を共有することが明らかにされている。この高い遺伝的相同性により、両ウイルスはキメラウイルス構築に際して理想的な構成要素となる。