著者
伊藤 麻美子 泉 キヨ子 天津 栄子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.100-108, 2005-03-15

本研究の目的は,施設入所初期において認知症高齢者が他の認知症高齢者とどのような交流を図っているのかを明らかにすることである.介護老人保健施設の認知症専門棟に入所した中等度・重度の認知症高齢者9名を対象とし,入所から1週間,9時から17時における認知症高齢者相互の交流を参加観察法で観察した.交流106場面のデータを質的に分析した結果,施設入所初期における認知症高齢者相互の交流の様態として,「接点をもつ」,「分かち合う」,「求める」,「気遣う」,「向き合えない」,「摩擦をおこす」の6つのカテゴリーを見出した.これより,認知症が進行しても他者に関心をもち,関わる力をもつ一方で,認知障害や視聴覚障害,不安定な精神状態,環境の不備により,両者が向き合えなかったり,トラブルが生じる実態が明らかとなった.