著者
成田 香織 田髙 悦子 金川 克子 宮下 陽江 立浦 紀代子 天津 栄子 松平 裕佳 臺 有桂 河原 智江 田口 理恵 酒井 郁子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.16-22, 2011-03-18 (Released:2017-04-20)

目的:農村部における認知症予防に向けた介護予防事業への参加者と不参加者の特徴の相違を明らかにし,不参加者における適切な支援を含めた今後の介護予防のあり方を検討することである.方法:対象はA県在住の地域高齢者における認知症予防に向けた介護予防事業対象者(特定高齢者)94名(参加者47名,不参加者47名)である.方法は質問紙調査であり,基本属性,身体的特性(認知機能,生活機能),心理的特性(健康度自己評価),社会的特性(ソーシャルサポート)等を検討した.結果:参加群は平均年齢79.5(SD=5.8)歳,不参加群は82.0(SD=6.2)歳であり,基本属性に有意な差はみられなかった.不参加群は参加群に比して,認知機能の低い者の割合が有意に高く(p=0.03),手段的自立(p=0.02),知的能動性(p<0.001),社会的役割(p=0.07)が有意に低いもしくは低い傾向があった.また不参加群は参加群に比して,手段的サポートが低く(p=0.09),サポートが乏しい傾向があった.なお参加群の事業参加の動機は,孤独感の緩和や人とのつながりが最も多く,次いで,物忘れの重大さの自覚や将来の認知症への懸念などとなっていた.結論:農村部の認知症予防に向けた介護予防事業不参加者は参加者に比較して,生活習慣や対人交流の脆弱性があり,今後は,高齢者一人ひとりの特性やニーズに応じた参加への意欲や動機づけの支援が必要である.
著者
細川 淳子 佐藤 弘美 高道 香織 天津 栄子 金川 克子 橋本 智江 元尾 サチ
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.81-88, 2004-03-15
被引用文献数
2

平成14年度春のグループ回想法プログラムにおけるビデオ撮影によって得られた表情の画像と,その表情時の回想内容を重ね合わせながら,一事例(A氏,88歳男性)にみられる特徴的な表情を捉える試みを行った.さらに,その表情が日常生活でもみられるかを観察した.結果,5回の回想法でみられたA氏の特徴的な表情として【難しい表情】【見定める表情】【笑いの表情(社交的な微笑み・照れ笑い・口を大きく開けた笑い)】【困った表情】【おどけた表情】の5つが抽出された.また,3日間の日常生活における対人交流場面との比較では,困った表情やおどけた表情は観察されず,難しい表情と見定める表情は各々1場面観察された.笑いの表情では,社交的な微笑みは1場面,照れ笑いは数回,口を大きく開けた笑いは,アクティビティケア時に観察された.日常生活では全般的に表情が変わらない時間が長かった.表現された表情から回想法での刺激が対象にとってどんな意味をもったのかを吟味することで回想法プログラムの評価を行い,そこで引き出された力を日常生活の中で活かしていくケアが重要だと考える.
著者
伊藤 麻美子 泉 キヨ子 天津 栄子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.100-108, 2005-03-15

本研究の目的は,施設入所初期において認知症高齢者が他の認知症高齢者とどのような交流を図っているのかを明らかにすることである.介護老人保健施設の認知症専門棟に入所した中等度・重度の認知症高齢者9名を対象とし,入所から1週間,9時から17時における認知症高齢者相互の交流を参加観察法で観察した.交流106場面のデータを質的に分析した結果,施設入所初期における認知症高齢者相互の交流の様態として,「接点をもつ」,「分かち合う」,「求める」,「気遣う」,「向き合えない」,「摩擦をおこす」の6つのカテゴリーを見出した.これより,認知症が進行しても他者に関心をもち,関わる力をもつ一方で,認知障害や視聴覚障害,不安定な精神状態,環境の不備により,両者が向き合えなかったり,トラブルが生じる実態が明らかとなった.