著者
戸ヶ里 泰典 山田 正己 泉 キヨ子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_115-1_123, 2004-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
39

尿路カテーテル装着患者への尿路感染予防のための外尿道口周囲のケア(meatal care)は,様々な根拠に基づいた多種の方法で実施されていることが多い。そこで米国や英国のレビューやガイドライン,RCT研究等を概観し,尿路感染予防に効果的な外尿道口ケア方法を検討した。その結果,短期間(~7日)の留置に限る場合にはポビドンヨードによる消毒や石鹸洗浄の実施,抗生剤軟膏の塗布が細菌尿の出現に関連するという報告から,これらの実施を控えることが望ましいことがわかった。一方,中期間(7~30日)および長期間(1ヶ月以上)留置の場合,根拠とすべき研究は未だ報告されていない。すなわちEBNの観点より,尿路感染予防のための外尿道口ケアとは,通常の身体保清のみであるといえる。また今後,長期留置患者では感染防止に加え,顕性感染予防のためのケア方法の探究といった,視野を広げた研究が必要と考えられる。
著者
鈴木 みずえ 松井 陽子 大鷹 悦子 市川 智恵子 阿部 邦彦 古田 良江 内藤 智義 加藤 真由美 谷口 好美 平松 知子 丸岡 直子 小林 小百合 六角 僚子 関 由香里 泉 キヨ子 金森 雅夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.487-497, 2019-10-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
34

目的:本研究の目的は,パーソン・センタード・ケアを基盤とした視点から認知症高齢者の転倒の特徴を踏まえて開発した転倒予防プログラムの介護老人保健施設のケアスタッフに対する介入効果を明らかにすることである.方法:2016年5月~2017年1月まで介護老人保健施設で介入群・コントロール群を設定し,認知症高齢者に対する転倒予防プログラムを介入群に実施し,ケアスタッフは研修で学んだ知識を活用して転倒予防に取り組んだ.研究期間は,研修,実践,フォローアップの各3カ月間,合計9カ月間である.対象であるケアスタッフにベースライン(研修前),研修後,実践後,フォローアップ後の合計4回(コントロール群には同時期),転倒予防ケア質指標,学際的チームアプローチ実践評価尺度などのアンケートを実施し,割付条件(介入・コントロール)と時期を固定因子,対象者を変量因子,高齢者施設の経験年数,職種を共変量とする一般線形混合モデルを用いた共分散分析を行った.結果:本研究の対象者のケアスタッフは,介入群59名,コントロール群は70名である.転倒予防プログラム介入期間の共分散分析の結果,転倒予防ケア質指標ではベースライン63.82(±11.96)からフォローアップ後70.02(±9.88)と最も増加し,有意な差が認められた.介入効果では,認知症に関する知識尺度の効果量が0.243と有意に高かった(p<0.01).結論:介入群ではケアスタッフに対して転倒予防ケア質指標の有意な改善が得られたことから,転倒予防プログラムのケアスタッフに対する介入効果が得られたと言える.
著者
鈴木 みずえ 加藤 真由美 谷口 好美 平松 知子 丸岡 直子 金盛 琢也 内藤 智義 泉 キヨ子 金森 雅夫
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.27-38, 2021-03-10 (Released:2022-04-03)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,パーソン・センタード・ケアを基盤とし,さらに認知症高齢者の転倒の特徴を踏まえて開 発した転倒予防教育プログラムの介護老人保健施設に入所する認知症高齢者に対する介入効果を明らかにすることである。【方法】2016 年6 月~2017 年5 月まで北陸地方の介護老人保健施設で介入群・コントロール群を設定し,認知症高 齢者に対する転倒予防教育プログラムを介入群に実施し,ケアスタッフは研修で学んだ知識を活用して転倒予防に取り組んだ。研究期間は,ベースライン,研修,実践,フォローアップの各3 か月間,合計12 か月間である。【結果】本研究の介入群は18名(男性5名:27.8 %,女性13 名:72.2 %)コントロール群は14名(男性2名: 14.3 %,女性12 名:85.7 %)であった。平均年齢は,コントロール群は84.79(± 6.59)歳,介入群は86.67(± 7.77)歳であった。転倒率・転倒件数に関しては,介入群の転倒率はベースライン期間66.7 %に対して実践期間は41.2% と減少,転倒件数ではベースライン期間19 件から実践期間10 件と減少していた。介入群をベースライン時のGBS スケール下位尺度C(感情機能),D(認知症の症状)の得点で高群,低群の2 群に分けた結果,高群において転倒件数が有意に減少していた。【考察】本研究はBPSD 高群に対して転倒率が有意に減少したことから,BPSD に関連した転倒予防に効果的なこと が示唆された。
著者
大島 あゆみ 宮中 めぐみ 泉 キヨ子 平松 知子 加藤 真由美
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.53-61, 2005-11-01
被引用文献数
2

本研究の目的は,老人性難聴をもちながら地域で生活している高齢者の体験の意味を明らかにすることとした.対象は耳鼻科医に老人性難聴の診断を受け,地域で生活している高齢者17名である.方法は半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.その結果,難聴高齢者は何とかして聞きたいと積極的に工夫して聞いていた.一方では,すべてを聞こうとは思わないと聞かなくてもよいと思えることを自ら選択していた.また,聞こえづらさにより趣味や仕事,人との関わりに影響を受けるだけでなく,身の危険も感じていた.補聴器は思いどおりにならないとしながらも,自分が補聴器に合わせて慣れなければならないと,開きたい場面で補聴器を利用していた.さらに,難聴高齢者は聞こえそのものや他人と比較し自分を捉え,今後も何とか死ぬまで聞こえを保持したいと思いながら,地域で生活していることが明らかになった.以上より,難聴高齢者がさまざまな思いをあわせもち地域で生活していることを理解し,「聞きたい」という強みを支える援助の必要性が示唆された.
著者
加藤 真由美 泉 キヨ子 川島 和代
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13427318)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.111-115, 1999
被引用文献数
2 2

1)地域高齢者の筋力は,男が18~20kg,女が15~17kgで,75歳未満が17~18kg,75歳以上が14~17kgであった.骨量は男が25~27%,女が25~26%で,75歳未満が25~27%,75歳以上が25~26%であった.2)転倒経験者は年間30%で,転倒は屋外での発生が最も多く,天候など環境変化への適応が低下していた.3)筋力の2年間の推移は,男が15kgから16.5kg,女が14.5kgから17.5kgで,75歳未満が15kgから18kg,75歳以上が13kgから17kgと上がった.骨量は男が30%から23%,女が26%から24%,75歳未満及び75歳以上共に26%から24%と減少した.4)2年続けて転倒した6名のうち3名は降圧剤を使用,3名は白内障,3名は下肢筋力が同年代と比較して9~16kgと低値であった
著者
伊藤 麻美子 泉 キヨ子 天津 栄子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.100-108, 2005-03-15

本研究の目的は,施設入所初期において認知症高齢者が他の認知症高齢者とどのような交流を図っているのかを明らかにすることである.介護老人保健施設の認知症専門棟に入所した中等度・重度の認知症高齢者9名を対象とし,入所から1週間,9時から17時における認知症高齢者相互の交流を参加観察法で観察した.交流106場面のデータを質的に分析した結果,施設入所初期における認知症高齢者相互の交流の様態として,「接点をもつ」,「分かち合う」,「求める」,「気遣う」,「向き合えない」,「摩擦をおこす」の6つのカテゴリーを見出した.これより,認知症が進行しても他者に関心をもち,関わる力をもつ一方で,認知障害や視聴覚障害,不安定な精神状態,環境の不備により,両者が向き合えなかったり,トラブルが生じる実態が明らかとなった.