- 著者
-
伴 清治
- 出版者
- 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
- 雑誌
- 日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.3, pp.187-196, 2022-09-30 (Released:2022-10-30)
- 参考文献数
- 22
インプラント上部構造用材料は,レジン系,セラミックス系,金属系に大別でき,多くの選択肢がある.セラミックス系はさらにガラスセラミックス系とジルコニア系に二分される.一方,デジタル技術の進歩により,CAD/CAMシステムを使用して高い適合精度でインプラント上部構造を製作することが可能となってきている.また,CAD/CAMシステムは年々多様化し,使用可能な材料が増える傾向にあり,その選択に苦慮する場合がある.たとえば,金属系材料は機械的性質においては満足できるが,審美性およびアレルギー問題により使用は限定される.PEEKおよびPEKKなどのスーパーエンジニアリングプラスチックは化学的性質に優れているが,硬さが低く主にフレーム(コア)として用いられる.また,ガラスセラミックスやコンポジットレジンは微視的には不均質組織であり,機械的性質および化学的性質が各微細組織部分で異なり,上部構造体として口腔内に長期に使用した場合,表面が荒れ,変色しやすくなる.結果として,対合歯の摩耗は大きくなってくる.一方,ジルコニアは均質組織であり,すべての上部構造用材料のなかで最も化学的耐久性が高く,強く,硬く,鏡面研磨仕上げをすれば,対合歯の摩耗は最も小さいと判断できる.したがって,材料学の立場からは,種々の歯科修復材料のなかでジルコニアがインプラント上部構造として最適の性質を有していると判断される.