著者
栗田 尚佳 位田 雅俊 保住 功
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.150, no.1, pp.29-35, 2017 (Released:2017-07-07)
参考文献数
52

亜鉛(Zn),銅(Cu),鉄(Fe)などの生体内微量金属元素は,酵素をはじめとする多くのタンパク質の活性中心となるため,生命活動を行う上で必要不可欠である.それぞれの元素において,過剰症,欠乏症が存在するため,生体内外における適切な調節が必要である.脳内においても,これらの微量元素は,神経系の調節に重要な役割を果たしている.したがって,微量金属元素の生体内恒常性の破綻は,脳神経系への影響を引き起こす可能性がある.これまでにアルツハイマー病(Alzheimer’s disease),パーキンソン病(Parkinson’s disease)および筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)などの神経変性疾患の発症と,微量金属元素の恒常性変化との関連が示唆されている.これらの知見を基に,金属キレート剤についての,疾患モデルを用いた治療研究も成されている.本総説では,神経変性疾患と金属トランスポーターをはじめとする調節因子との関わりについて,我々の知見を含めて,細胞内ストレス応答および生体内微量金属代謝異常という観点から概説する.
著者
浅野 真司 向所 賢一 位田 雅俊
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アクチン結合タンパク質であるエズリンは,細胞内で膜タンパク質と細胞骨格とを有機的に連結して,上皮細胞の頂端膜や神経組織の形態形成に働く。近年になって,エズリンが特定の膜輸送タンパク質や接着分子の細胞表面へのターゲッティングに関わることが明らかにされた。本研究では,エズリン遺伝子を改変したノックダウンマウスなどを用いて,主に動物個体におけるエズリンの上皮組織構築,上皮輸送調節や,神経細胞の突起形成やネットワーク形成における役割を検討した。その結果,エズリンが腎尿細管におけるリンの再吸収や,胆管細胞における胆汁の修飾や流量調節,また神経細胞における突起形成に関わることを見出した。