- 著者
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住吉 康大
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会春季学術大会
- 巻号頁・発行日
- pp.122, 2021 (Released:2021-03-29)
現在,日本では「多拠点居住」や「アドレスホッパー」などのように,自ら定住的な生活を離脱し,複数の地域で観光よりも深い関わりを持つ一方,移住ほど強く根付くことはなく,移動を続けることで得られるメリットを享受しようとする生活様式が注目されている.しかし,現時点では新奇な事象であり,十分な研究蓄積がないため,既存の概念との関係を踏まえ,どのように定位するか検討する必要がある.既に,同様の生活に対して「複数地域居住」や「多拠点生活」など,様々な呼称が林立している状態であり,研究を進める際の大きな障壁となっている.報告者は,この状況を踏まえて,「個人が,主体的に,特定の地域・拠点を基盤とした定住的な生活を離脱して,恒常的な移動を中心に据えた生活を志向する変化」に注目することが重要であると考え,「脱定住化」として提起した.本発表では,生活の質を重視した主体的な移動行動である点が類似している「ライフスタイル移住」の概念と,恒常的な移動を前提とした生活であるという点が類似している「ノマド」の概念とに関する先行研究を検討し,新たに「脱定住化」を導入する意義について考察する.