著者
住岡 敏弘
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.89-103, 2009-03-06

本稿は、アメリカ合衆国における人格教育に対する連邦政策の背景、政策の展開の特質と課題について明らかにした。人格教育運動は、1960年代以降の道徳教育方法の変化や若者の道徳の退廃状況に対して、アメリカが建国当初から重視してきた道徳教育を復興しようとする動きと捉えられる。その動きは、連邦政策のなかで学力向上政策と結びつき、人格教育に対する補助金事業をはじめ様々な連邦施策が開始された。人格教育に対する連邦政策の展開過程をまとめると、『危機に立つ国家』以降の学力向上への模索のなかで、学力向上に際して道徳性や規律の重要性が意識されてきた。その後、クリントン政権のもとでは、大統領自らが一般教書のなかで人格教育の重要性を訴える等、人格教育を推進していく連邦政府の姿勢が明確にされた。これらを背景として、『アメリカ学校改善法』のなかでは、人格教育に対する補助金がパイロット事業として制度化された。さらに、ブッシュ政権のもとで、『落ちこぼれ防止法』が制定され、同法のもとで人格教育補助金事業は正式な事業として位置づけられ、さらに連邦教育省の戦略プランにも「強い人格と市民性」の促進が掲げられるなど、人格教育は連邦教育政策のなかで確たる地位を確立してきたといえる。
著者
住岡 敏弘
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.243-256, 2012-03-02

人格教育をめぐる政策としては、「人格教育における連携事業」(Partnership in Character Education Project)が有名である。この事業は、1994年に、クリントン政権のもとで成立した『アメリカ学校改善法』(Improving America's Schools Act)のなかで規定され、人格教育プロジェクトについて州政府に対する補助金規定が盛り込まれた。その後、ブッシュ政権のもとで2002年に成立した『落ちこぼれ防止法』(No Child Left Behind Act)においてもこの事業は引き継がれ今日に至っている。しかし、「人格教育における連携事業」創設以前にも、連邦政府は既に人格教育に対する補助金事業を行っていた。1981年10月には、『シティズンシップの原理の教授に教育分野の包括補助金を使用する権限を付与する法律(An Act to authorize the use of education block grant funds to teach the principles of citizenship)(PL97-313)』が成立し、レーガン政権下での『初等中等教育法』の改正法である『1981年教育統合改善法(Education Consolidation and Improvement Act of 1981)』チャプター2の包括補助金から、シティズンシップ教育プログラムの改善に対して補助金が支出することが可能になったのである。この規定にもとづき、人格教育プログラムの改善にも連邦資金が使われてきたのである。本論では、シティズンシップ教育に対する連邦政府の公的関与に対する本格的な分析の前段階として、同法成立に向け連邦議会で提出された法案ならび公聴会での論議についての確認を行った。
著者
住岡 敏弘 Toshihiro SUMIOKA
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.243-256, 2012-03-02

人格教育をめぐる政策としては、「人格教育における連携事業」(Partnership in Character Education Project)が有名である。この事業は、1994年に、クリントン政権のもとで成立した『アメリカ学校改善法』(Improving America's Schools Act)のなかで規定され、人格教育プロジェクトについて州政府に対する補助金規定が盛り込まれた。その後、ブッシュ政権のもとで2002年に成立した『落ちこぼれ防止法』(No Child Left Behind Act)においてもこの事業は引き継がれ今日に至っている。しかし、「人格教育における連携事業」創設以前にも、連邦政府は既に人格教育に対する補助金事業を行っていた。1981年10月には、『シティズンシップの原理の教授に教育分野の包括補助金を使用する権限を付与する法律(An Act to authorize the use of education block grant funds to teach the principles of citizenship)(PL97-313)』が成立し、レーガン政権下での『初等中等教育法』の改正法である『1981年教育統合改善法(Education Consolidation and Improvement Act of 1981)』チャプター2の包括補助金から、シティズンシップ教育プログラムの改善に対して補助金が支出することが可能になったのである。この規定にもとづき、人格教育プログラムの改善にも連邦資金が使われてきたのである。本論では、シティズンシップ教育に対する連邦政府の公的関与に対する本格的な分析の前段階として、同法成立に向け連邦議会で提出された法案ならび公聴会での論議についての確認を行った。
著者
住岡 敏弘 Toshihiro SUMIOKA
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.73-84, 2014

本稿は、アメリカ南部で、プランテーション労働を支える労働力として奴隷制が発展していくなかで、どのように黒人に対して「読み書き」の教授の禁止の法制化が展開したかについて、ジョージア州を事例に取り上げ、明らかにしてきた。その法制化過程は大きく2つの段階に分けることができる。第一段階は、奴隷法による奴隷に対する読み書きの禁止の法制化の段階である。第二段階は、1829年の、いわゆる「反識字法」の一環として「黒人商船隔離法」が制定された段階である。こうした段階を経て、リテラシー教授禁止は自由黒人にまで広げられ強化されていった。