著者
木村 沙也加 三輪 奈緒子 宇野 真由奈 金森 千香 高崎 摩依子 田中 美子 竹内 実
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-11, 2016-07

蜂蜜は、天然に生産される保存性の高い食品として親しまれているが、創傷治癒などの伝統的な薬としても世界各国で利用されている。また、蜂蜜には免疫作用として好中球遊走を促進することが知られている。好中球は抗腫瘍活性を示すことが知られているが、蜂蜜の好中球を介する抗腫瘍作用についての報告は非常に少なく、詳細な解明はされていない。そこで、蜂蜜による好中球の抗腫瘍作用と貪食機能への影響について検討した。抗腫瘍作用の指標のLL/2腫瘍増殖体積は、コントロール群と比較して蜂蜜2mg、20mg投与群で有意な減少を示し、蜂蜜に抗腫瘍作用が認められた。蜂蜜投与によるLL/2腫瘍移植マウスの末梢血白血球のDot Plot は、FSC値200~600、SSC値400~960に正常マウスには認められない細胞集団が出現し、Gr‒1陽性細胞比率の増加から、この細胞集団は好中球であることが認められた。好中球の出現が認められたため、好中球の抗腫瘍活性について検討した。LL/2腫瘍細胞増殖に対してコントロール群、蜂蜜投与群の好中球は有意な増殖抑制を示し、好中球に抗腫瘍活性があることが認められ、また蜂蜜20mg投与群でコントロール群と比較して有意な腫瘍増殖の抑制を示した。これらの結果より、好中球にLL/2腫瘍細胞に対する抗腫瘍活性があることが認められ、その抗腫瘍活性は蜂蜜投与により増強されることが認められた。好中球の貪食機能は、腫瘍移植マウスで有意な増強が認められた。以上より、蜂蜜が好中球を介して抗腫瘍作用を示したことから、蜂蜜の癌治療への応用が期待できる。
著者
白井 悠佑 佐々木 大樹 田中 美子 松夲 耕三
出版者
京都産業大学先端科学技術研究所
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
no.14, pp.13-29, 2015-07

2型糖尿病へのハチミツの影響を調べた研究はいくつか報告されているが、その真偽やメカニズムについてはよくわかっていない。そこで、本研究は肥満性2型糖尿病マウスを用いてハチミツが糖尿病に及ぼす影響やそのメカニズムの一端を見いだすことを目的に研究した。肥満性糖尿病マウスとしてKK-Ayマウスを使用。各グループ6~7匹になるように5つのグループ(PBS、グルコース、スクロース、ハチミツ(クリの花))にわけた。それ以降、グループ毎に体重を測定し、血糖値等を各グループ間で比較した。特に糖分として日常利用する佐藤との比較に重点をおいた。 KK-Ayマウスへの各種糖の投与により、ハチミツ群と比較してスクロース群は有意に高い体重を示した。また、各種糖類投与前に行った糖負荷試験(oral sugar tolerance test: OSTT)ではスクロース群とハチミツ群の間に有意な違いはなく、むしろ30分以降ハチミツ群はスクロース群よりも高い血糖値を示していた。しかし、投与8週間後に行ったOSTTではスクロース群はどの時点においてもハチミツ群の血糖値よりも高い値を示した。一方、血中脂肪関連物質に関しては、遊離脂肪酸、コレステロール、中性脂肪について有意差はない結果となった。各種糖投与前と投与後15分、30分の血中インスリン濃度測定では、各群ともに有意差は認められなかったが、ハチミツ群は15分血で高いインスリン値を示した。これに対し、スクロース群は有意差はないが最も低い傾向が見られた。肝臓および脂肪組織での遺伝子発現量の比較では、肝臓ではハチミツとスクロースでPBS と比較して有意な増加を示した。しかし、それ以外では各グループ間で違いは確認されなかった。 従って本研究において、KK-Ay糖尿病マウスへのハチミツ投与の影響は、スクロースの投与と比較して体重や血糖値の上昇を抑える作用のあることが確認された。即ち、糖尿病状態において、糖分として継続的砂糖投与は血糖値上昇を招くが、継続的ハチミツ投与ほとんど血糖値上昇が認められず、そのことはハチミツは砂糖に比べて、格段によい糖分であると云える。即ち、ハチミツは糖尿病に優しい糖分と云える。
著者
湯浅 愛里 田中 美子 宇野 真由奈 金森 千香 竹内 実
出版者
京都産業大学先端科学技術研究所
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-12, 2017-07

外国産ハチミツによる免疫機能への影響は報告されているが、日本国産ハチミツの免疫と抗炎症作用についての詳細な解明はされていない。そこで、日本国産ハチミツとして京都産業大学産ハチミツ(京産ハチミツ)を用い、免疫細胞である肺胞マクロファージ(AM)とLipopolysaccharide(LPS)で誘導した肺炎症に対する影響について検討した。AMにLPS添加群(最終濃度10μg/ml)とLPSに京産ハチミツ添加(ハチミツ最終濃度1、10mg/ml)したHL(Honey + LPS)群を設け共培養し、炎症性サイトカインであるIL-1βとCXCL2のmRNA発現をRT-PCR法により調べた。AMのIL-1β mRNA発現比率は、LPS添加群と比較して、HL添加群のハチミツ濃度10mg/mlで有意な(p < 0.01)減少が認められた。一方、CXCL2 mRNA発現比率は、LPS添加群と比較して、HL添加群のハチミツ濃度10mg/mlで有意な(p < 0.001)減少が認められ、ハチミツに炎症性サイトカインの発現を抑制することが認められた。これらのin vitro系の結果から、LPS投与による肺炎症への影響を検討した。マウスにLPS 50 μg/ 匹を投与したLPS 群、ハチミツ10mg/ 匹を投与し24時間後にLPSを投与したHoney + LPS(HL)群について、それぞれのBAL 総細胞数を比較した。BAL総細胞数は、LPS群で有意な(p < 0.001)増加が認められたが、HL群で有意な(p < 0.05)減少が認められた。好中球の細胞比率はLPS群で有意な(p < 0.001)増加が認められたが、HL群で減少傾向が認められた。これらの結果から、京産ハチミツはAMのIL-1β、CXCL2の産生を抑制し、LPSによる好中球の肺への浸潤を抑制し、抗炎症作用を示すことが示唆された。
著者
筒井 稔 柳谷 俊 加納 靖之
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-6, 2012-07

地震に伴って地殻岩盤に生じる圧電効果により、電磁波パルスが励起されるとの仮説の下、京都産業大学では地中に深さ100mのボアホールを構築し、その中に電磁波センサーを挿入して地中励起の電磁波を検出する事を目指して観測を続けている。一方、この岩盤からの電磁波励起を確認検証するために、地上の実験室で岩石に衝撃応力を印加する基礎実験を行っている。最初は効果の強い水晶における衝撃印加実験を行い、円柱状の水晶の周方向に沿った磁界が発生している事を確かめた。今回は、花崗岩への衝撃応力印加による電磁界の励起を確認するための実験を行った。一辺が10cmで長さが50cmの四角柱の花崗岩を用いて、その四角柱の側面の軸方向に沿った4か所に電界・磁界のセンサーを配置し、花崗岩の上端で軸方向に衝撃応力を印加した時の、各位置での電界・磁界の検出測定実験を行った。この実験により、電界・磁界成分ともに検出された。検出された電界・磁界波形の立ち上がり時刻は上部から下部へと少しずつ時間の遅れが認められた。この時間差から、花崗岩中の衝撃波の速度が計算でき、それは地震波のP波の速度と同等である事が明らかとなった。この事から岩盤に加わる衝撃応力によって、電界・磁界が十分に励起される事を確認した。
著者
山岸 博
出版者
京都産業大学先端科学技術研究所
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-10, 2020-07-31

植物の育種においては、育種目標の高度化に伴って、実用作物に有用な遺伝形質を提供する遺伝子供給源の範囲が拡大してきた。この範囲を、作物との有性生殖によって利用できる植物よりさらに大きく広げる方法として、細胞融合が開発された。細胞融合は雑種化の範囲を拡大するだけでなく、葉緑体ゲノムとミトコンドリアゲノムの新しい組合わせを生じる等の利点を有する。本研究では、シロイヌナズナとキャベツの細胞融合によって得られた体細胞雑種を出発点として、Brassica oleracea に属するカイランを主たる花粉親に用いた連続戻し交雑の経過と、その結果得られた雄性不稔個体の特性をとりまとめた。雄性不稔はBC8 世代以降固定し、不稔の原因はシロイヌナズナとキャベツの間で組換ったミトコンドリアゲノムの構造にあると推定された。一方、体細胞雑種後代の種子稔性は、世代の経過とともに向上した。
著者
高橋 純一 竹内 実 松夲 耕三 野村 哲郎
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
no.13, pp.25-37, 2014-07

日本で飼養されているセイヨウミツバチApis melliferaの系統調査とアフリカ化ミツバチやアフリカ系統が侵入してきたときの識別法としてミトコンドリアDNA のPCR-RFLPおよび塩基配列の適用性の検討を行った。サンプルはヨーロッパおよびアフリカと日本各地の12地域のミツバチ群を使用した。ミトコンドリアDNAのCOI-COII間を特異的に増幅するPCRを行ったところPCR産物長の違いで亜種間を識別できることが示された。日本のセイヨウミツバチは、すべての個体がA. meliifera ligsticaのC系統と一致していたためPCRと電気泳動によりアフリカ系統のセイヨウミツバチA. mellifera scutellataと識別可能であることがわかった。M系統のセイヨウミツバチは輸入されている可能性もあるため、もしM系統のハプロタイプが見つかった場合には、PCR-RFLPと塩基配列の解析の方法を併用することにより迅速に日本におけるセイヨウミツバチの遺伝構造やアフリカ産のミツバチと識別が可能であることが明らかになった。
著者
寺地 徹
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.71-86, 2016-07

植物ゲノム科学研究センターでは、「核と細胞質のゲノム情報を活用した新しいバイオ技術の開発と細胞質ゲノムの構造解析」と題する5カ年計画のプロジェクトを実施している。このプロジェクトに含まれる実験課題は多岐にわたるが、大きくは、1)葉緑体の遺伝子組換え、2)ミトコンドリアゲノムの構造解析、3)その他、の3つに分けられる。また、それぞれのカテゴリーの中で、基盤的な研究、さらには萌芽的な研究がなされている。本稿では、今年度に実施した、以下の7つの課題について報告する。1.有用遺伝子を葉緑体ゲノムに持つ組換えレタスならびにトマトの作出2.パンコムギにおける葉緑体形質転換系の開発3.斑入りを示す組換えタバコの葉緑体ゲノムの構造変異4.イネ科植物のミトコンドリアゲノムの解読5.タマネギのミトコンドリアゲノムの解読6.ナスの稔性回復遺伝子の単離7.ゲノム編集による新しい遺伝子改変技術の検討
著者
谷村 圭哉 谷田 彩花 田中 美子 佐々木 大樹 松本 耕三 Keiya TANIMURA Ayaka TANIDA Yoshiko TANAKA Daiki SASAKI Kozo MATSUMOTO 京都産業大学総合生命科学部動物生命医科学科 京都産業大学総合生命科学部動物生命医科学科 京都産業大学ミツバチ産業科学研究センター 京都産業大学生物工学研究科 京都産業大学総合生命科学部動物生命医科学科
出版者
京都産業大学先端科学技術研究所 ; 2002-
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
no.15, pp.13-32, 2016-07

これまでにハチミツが血糖値をあまり上昇させないという報告や、砂糖と比較して体重をあまり増加させないという報告がされている。しかし、その真偽やメカニズムについては、まだ明らかにされていない。本研究は、肥満性2型糖尿病動物を用い、ハチミツが糖尿病に与える影響とそのメカニズムを解明することを目的としている。 本研究では、肥満性糖尿病マウスを用い、ハチミツと各種糖を長期間投与し、血糖値、インスリン値を測定し、糖尿病に及ぼすハチミツの影響を調べ、さらにその影響に関与する遺伝子の探索を行った。 各種糖を投与した結果、ハチミツ群では、グルコース群やスクロース群に対して体重や脂肪量が増加していなかった。また、投与4週間後、12週間後の経口糖負荷試験(Oral sugar tolerance test(OSTT))では、グルコース投与群やスクロース投与群に対し、ハチミツ投与群は相対的に低い血糖値を示した。血中脂肪関連物質に関しては、遊離脂肪酸において、ハチミツ群で他の群と比較して有意な減少が認められた。血中インスリン濃度を測定したところ、 各種糖投与60分後において、ハチミツ投与群はPBS投与群、グルコース投与群と比較して有意に低い値を示した。ハチミツの影響をさらに調べるために、肝臓においてインスリンシグナル経路について調べてみたが、影響は見られなかった。そのため、肝臓において脂質代謝に関わるタンパクについて調べたところ、AMPK‒activated protein kinase(AMPK)のリン酸化がPBS群とハチミツ群では高くなっていた。 本研究において、NSYマウスへのハチミツは、スクロースの投与と比較して体重や血糖値の上昇を抑え、血中遊離脂肪酸濃度を減少させることが確認された。そして、その要因の一つとして、ハチミツはAMPKのリン酸化を亢進させていると考えられる結果を得た。
著者
西野 佳以 齋藤 敏之 Yoshii NISHINO Toshiyuki SAITO 京都産業大学総合生命科学部 京都産業大学総合生命科学部
出版者
京都産業大学先端科学技術研究所
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
no.13, pp.69-80, 2014-07

ストレスによる過剰な副腎皮質ホルモン(CORT)の分泌は、脳の海馬や前頭前野において神経変性や萎縮をおこし、さらに心的外傷後ストレス障害(PTSD)等の脳機能障害にむすびつくと考えられている。本研究では、ストレスに起因すると思われる脳の調節系の破綻に絡む何らかの潜在性因子の一つとしての向神経性ウイルスに焦点をあて、ストレスとウイルス性脳機能障害発症との関連性を明らかにすることを目的とした。 ボルナ病ウイルス(Borna disease virus: BDV)は、動物に持続感染し運動障害、行動学的異常などの神経症状を引き起こす向神経性ウイルスである。野外では不顕性感染している動物が多く存在するが、感染動物が発症するメカニズムは明らかではない。本年度の研究では、過剰なストレスがBDV感染動物に与えられた場合の脳障害(発症)について調べるための培養細胞モデルとして、マウスの大脳皮質神経初代培養細胞を作製し、BDVを感染した後、CORTあるいはカイニン酸添加による影響について解析した。 その結果、BDV感染大脳皮質神経初代培養細胞にCORTを添加すると、神経細胞へのウイルスの拡散速度が早くなった。また、カイニン酸を添加すると、感染細胞の細胞障害率が上った。これらの結果から、CORTはBDV感染神経初代培養細胞におけるウイルス伝播性を亢進すること、カイニン酸はBDV感染神経細胞に対しより強く興奮刺激を与える可能性が示唆された。以上の結果から、BDVが持続感染している動物において過剰なストレスが与えられると、脳内のウイルス感染が広がること、ウイルス感染細胞では神経伝達物質であるカイニン酸受容体やAMPA 型グルタミン酸受容体を介するシグナル伝達が増強される可能性が示唆された。
著者
齋藤 敏之 西野 佳以 Toshiyuki SAITO Yoshii NISHINO 京都産業大学総合生命科学部 京都産業大学総合生命科学部
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.93-99, 2013-07

ストレスによる過剰な副腎皮質ホルモン(CORT)分泌により、脳の海馬や前頭前野において神経変性や萎縮がおこり、さらに心的外傷後ストレス障害(PTSD)等の脳機能障害にむすびつくと考えられている。近年、ストレスに起因すると思われる脳機能障害が増加していることから、その背後に脳の調節系の破綻に絡む何らかの因子が潜んでいると考えられるが、解明に至っていない。本研究では、潜在性因子の一つとしての向神経性ウイルスに焦点をあて、ストレスによる脳機能障害との関連性を明らかにすることを目的としている。 脳の中では海馬や前頭前野等に亜鉛含有神経網が存在する。これらの脳の領域がストレスにより障害や萎縮がおこる部位であることを考え合わせると、亜鉛含有神経の変化とストレスによる脳機能障害との間に何らかの因果関係があると推測される。 亜鉛含有神経網はTimm染色法により可視化できる。これまでの研究ではTimm染色プロトコールに多くの改変が加えられており、汎用性の高い、簡便なプロトコールがない。そこで、これまで報告されているTimm染色法に技術的な再検討を加え、より汎用性のある染色プロトコールの確立を目指した。マウスを用いた今回の検証では、海馬を対象とする簡便なTimm染色法を確認した。現在、向神経性ウイルスやCORTの亜鉛含有神経に対する影響を細胞レベルで解析するため、脳神経細胞の初代培養法の検証と標本の評価を進めている。
著者
高橋 純一 野村 哲郎 Jun-ichi TAKAHASHI Tetsuro NOMURA 京都産業大学総合生命科学部 京都産業大学総合生命科学部
出版者
京都産業大学先端科学技術研究所
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.31-40, 2015-07

ミツバチ科マルハナバチに属するエゾオオマルハナバチBombus hypocrita sapporoensisは、特定外来種であるセイヨウオオマルハナバチの代替花粉交配用昆虫として注目されている。今回我われは、本種の農業利用を進めるための遺伝育種学的解析に必要なマイクロサテライトDNAマーカーの適用性を検討した。120種類のマーカーのうち、57種類が多型解析に利用できることがわかった。さらに8種類のプライマーは、マルチプレックスPCRによる同時解析が可能であることを明らかにした。これらのツールキットを利用して女王蜂の受精嚢内から単離した精子DNAの解析を行ったところ、交配雄蜂の遺伝子型を特定できることがわかった。 The Bumblebee is a eusocial Hymenoptera with an annual life cycle and is often utilized as an agricultural pollinator. We developed an polymorphic microsatellite DNA toolkit for the Japanese bumblebee Bombus hypocrita sapporoensis using multiplex PCR. At 57 of these 120 loci, high allelic variation was observed in 20 individual males. In addition to a method of spermathecae PCR, we developed 8 polymorphic microsatellite DNA toolkit for the B. h. sapporoensis. These results suggest that high-throughput genotyping method can be used to gain more information regarding breeding systems and for more deeply understanding social evolution in the B. h. sapporoensis.