著者
佐々木 奈央 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.305-310, 2015

本研究では,福祉施設の立地状況が地域の要援護者支援に与える影響を調査する.調査を通じて,危険地への立地を防ぐ施策や,福祉施設の立地状況を考慮した在宅の災害時要援護者支援対策に関する知見を抽出する.本研究では立地状況を「土砂災害警戒区域か否か」というハザード的な視点からだけでなく,人口や土地利用等のコミュニティ的な視点からも着目した.その結果,立地状況は「職員の参集率」と「地域住民から得られる支援の可能性」を通じて,地域の要援護者支援に影響を及ぼす可能性があることがわかった.また,コミュニティ的な特徴に応じて施設立地が規定され,その結果として危険区域に立地している側面も見いだされた.以上より,危険地への立地を防ぐ施策として,警戒区域内施設の分類フローに基づく段階的な立地誘導・規制の枠組みを提案した.また,地域住民との連携や施設の相互応援協定等,施設の立地状況を考慮した要援護者支援策の方向性の検討フローを提案し,多様な共助の方法の可能性を示した.