著者
沼田 宗純 國分 瑛梨子 坂口 理紗 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.547-554, 2011

東日本大震災では,特定の市町村への報道の集中,社会的に関心の高い原発事故に対する報道の集中等,適切な災害対応に貢献する報道ではないと考えられる.そこで本研究では,災害対応の循環体系の中で,「いつ,だれに,どんな情報」を伝えると災害対応を迅速かつ効果的に行えるのかを分析し,「効果的な災害対応に貢献する報道モデルの構築」を目指す.本稿では,そのための基礎的な分析として,東日本大震災の発災後10日間におけるテレビ局別に報道された市町村と被害との関係,局別の報道内容を比較する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
吉村 美保 目黒 公郎
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.169-176, 2003-11-07 (Released:2018-11-29)
参考文献数
24

Recent damaging earthquakes have clearly revealed that retrofitting low earthquake-resistant structures is the key issue for earthquake disaster reduction. In this paper, a new system and policies for the promotion of retrofitting of weaker structures are proposed The main concept of the Retrofitting Promotion System (RPS) is that the government guarantees a portion of the building repair and reconstruction expenses if retrofitting is implemented by the owner following guidelines before the earthquake and in spite of this, the structure is damaged. The effect of applying the RPS to Istanbul in Turkey was investigated on the basis of the recovery activity data after the 1999 Kocaeli earthquake, Istanbul building stock data, and a hypothetical earthquake ground motion.
著者
沼田 宗純 國分 瑛梨子 坂口 理紗 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.547-554, 2011 (Released:2011-09-07)
参考文献数
4
被引用文献数
1

東日本大震災では,特定の市町村への報道の集中,社会的に関心の高い原発事故に対する報道の集中等,適切な災害対応に貢献する報道ではないと考えられる.そこで本研究では,災害対応の循環体系の中で,「いつ,だれに,どんな情報」を伝えると災害対応を迅速かつ効果的に行えるのかを分析し,「効果的な災害対応に貢献する報道モデルの構築」を目指す.本稿では,そのための基礎的な分析として,東日本大震災の発災後10日間におけるテレビ局別に報道された市町村と被害との関係,局別の報道内容を比較する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
野村 浩司 大原 美保 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.709-712, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
13

現在, 首都直下型地震などの巨大地震の発生が危惧されており, 特に都市部で発生する地震が日本経済へ及ぼす影響は大きい.本研究では, 兵庫県南部地震を対象として, 地震前後での土地価格の変動率関数を作成し, 地震が土地価格に及ぼす影響を分析した.地震直後の1996年は建物被害程度が大きいほど土地価格が下落したが, 2年目の1997年には全壊・全焼率が高い地域では土地価格の下落が止まる一方で, 半壊率が高い地域では下落し続けた.3年目以降は, 全壊・全焼率の高い地域から土地価格が回復し始めたが, 半壊率の高い地域では土地価格の回復に遅れが見られ, これは地域の復旧・復興の遅れによるものと考えられた.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
井原 毅 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.367-370, 2010

近年,大きな地震により列車の脱線,高架橋の損壊,軌道変状,盛土の崩壊などの被害が報告されている.幸い鉄道利用者に被害は出ていないが,ダイヤが混み合う時間帯に大地震が発生した場合,鉄道利用者に甚大な被害が出る可能性がある.本研究では,通勤ラッシュ時に走行する列車に衝撃が加わった状況を想定し,楕円形個別要素法による群衆行動解析モデルを用いて満員電車内の乗客の挙動を追跡し,人体に作用する力を考察した.解析の結果,車両が傾くことで乗客に大きな被害が出る可能性があることが示された.また,つり革を増設することで車両の傾きが20度の場合には乗客に作用する力を軽減できることがわかった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
沼田 宗純 井上 雅志 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.257-265, 2018-07-01 (Released:2018-08-01)
参考文献数
3

2016 年4 月14 日21 時26 分に熊本県と大分県で発生した地震では,初動対応における物資輸送に関しプッシュ型の物資輸送が行われた.本研究では,プッシュ型物資輸送のオペレーションの課題を整理し,円滑なプッシュ型物資輸送を実現するための要件定義を行った.大規模災害時に単に物資を被災地に送れば良い訳ではなく,要件が成立して初めてプッシュ型の物資輸送も機能する.首都直下地震や南海トラフなどの大規模災害に対してもプッシュ型の支援は必要となるが,円滑に実施するためにも本論で定義した要件の確認は必須である.
著者
沼田 宗純 原 綾香 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.359-363, 2013-07-01 (Released:2013-12-24)
参考文献数
4

東日本大震災のような広域的な災害ほど,被害の全容を掴むことは容易ではないため,テレビ報道で取り上げられた市町村には積極的な支援が届き,逆に,報道されない市町村に対しては支援が不十分となる等,テレビ報道の有無が災害対応に影響を及ぼすことがある.そこで本研究では,報道された市町村と支援の関係を明らかにするために,報道と義援金の関係,報道とボランティアの関係を分析した.その結果,被害量とボランティア数や義援金総額は必ずしも比例関係にあるわけではなく,被害が大きいにも関わらず,ボランティア数や義援金総額が少数・小額の市町村が多く存在することがわかった.また同規模の被害量であっても,市町村によってボランティア数や義援金総額は大きな偏りが生じている.これは,特定の市町村に報道が集中していることが原因と考えられる.
著者
立川 貴重 目黒 公郎 永田 茂 片山 恒雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.21-30, 1992-05

近年、都市機能や日常生活は「電力」に大きく依存しているため,電力供給機能が失われた場合には、各方面で大きな影響を受ける.特に地震をはじめとする自然災害が都市を襲った場合,程度の差こそあれ,高い確率で停電が起こることが予想され,電力の途絶が都市生活へ及ぼす影響を検討しておくことが急務となっている.ところで,1991年9月27日から28日にかけて,日本を縦断した台風19号は,広い暴風圏を持った典型的な「風台風」として,日本列島の西南部と北東部を中心に大きな被害を及ぼした.青森県のりんご被害,九州の森林被害などが台風通過後に大きな問題となったが,特に西南日本では,過去の災害でも例を見ない大規模な停電が発生した.停電の影響は710万戸に及び,これは全国の需要家の13%に当たる.一部の地域ではライフライン施設そのものにも被害が発生したが,都市機能に大きな影響を与える主因は,電力供給の停止から波及したライフラインの機能的被害である.一般に自然災害に伴うライフラインの被害は,物的被害と機能的被害のカップリングの形で発生するが,台風19号の場合は,停電が他のライフラインに与える機能的被害波及を明確に示すものである.このような事例は非常に希であり,この機に被害の状況と関係機関の対応を調査しておくことは,今後の都市防災に多くの知見を与えるものと思われる.そこで我々は,広範囲かつ長時間の停電が発生し,他のライフラインへの被害波及が顕著であった広島市周辺を対象として,現地調査を行った.調査対象は,主として電力,上水道,下水道,電気通信,都市ガス,交通,マスメディアなど,いわゆる都市のライフラインとした.広い意味での都市機能の被害に関する情報収集に努め,台風による強風,高潮,飛来物などによる施設の直接被害よりも,電気の供給がストップしたことによる影響に重点を置いて調査を実施し,関連資料を集めた.本論分は,調査結果をなるべく網羅的にまとめたものであり,広域かつ長期の停電が都市施設に与えた影響の「全体像」を示すことを目的としたものである.
著者
高野 佑 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.421-423, 2010-07-01 (Released:2010-11-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

観光地周辺で自然災害が発生すると,被害のなかった地域でも観光客数が減少することがある.本研究ではこのような現象を「観光手控え」と呼び,事例分析及び意識調査を行った.その結果,県外の観光客には安全・復興に関する記事はほとんど提供されておらず,安全状況を確認せずに「危険そう」との認識から観光手控え行動が発生しており,その傾向は男性よりも女性の方が強いことが分かった.また,観光客側は通常通りの観光活動が効果的な支援として求められていることをあまり認識していないことも明らかになった.その対策として,安全性の明確な提示や,支援としての観光活動の重要性の周知について具体的な方法を構築する必要性を提案した.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
川崎 昭如 ヘンリー マイケル 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.387-394, 2013-07-01 (Released:2013-12-24)
参考文献数
11

東日本大震災後の海外諸国の対応と各国民の行動にはどのような関係があったか.また,自国から退避が勧告されたにもかかわらず退避しなかった外国人や,その逆の行動をとった外国人の意思決定の理由や信頼をおいた情報は何であったか.本稿では,震災直後の各国政府の対応を整理し,東日本大震災時に関東地方に居住していた外国人を対象としたアンケート調査より,震災後の退避行動とその意思決定の理由,信頼をおいた情報源を,諸外国の勧告レベルごとに分析し,関係性を分析した.
著者
梅原 明彦 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.393-396, 2014-07-01 (Released:2014-09-27)
参考文献数
4

東日本大震災では被災地域内の火葬場の処理能力を遥かに上回る死者数が発生し,広域火葬計画の策定が進んでいなかったことや地域防災計画に遺体処理に関する項目を定めていなかったことから,大量の遺体の処理に大きく手間取り,宮城県内では仮埋葬という方法が取られた自治体があったことが分かった.この震災を機に遺体処理計画を検討する自治体が増えたが,その自治体の数はまだまだ少なく,被災地でもこれから検討を始める自治体が多いのが現状である.日本での災害時において犠牲者の遺族となった方々は,平常時よりもより迅速で且つ懇切丁寧な遺体処理を求める.しかし,遺族心情に配慮した方法はまだ十分に確立されていないため,遺体処理業務は防災計画において早急に改善を図らなければならない.
著者
藤生 慎 沼田 宗純 高田 和幸 大原 美保 目黒 公郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.4_189-4_200, 2012

本稿は東北地方太平洋沖地震で被災した三陸鉄道の現地調査やヒアリング調査を通じて、三陸鉄道の復旧・復興のプロセスをまとめたものである。当初、三陸鉄道は被害の状況から復旧は絶望視されていたが、沿線住民の復旧の強い要望や岩手県、沿線自治体の要望により新たな復旧資金スキームを創設し復旧のプロセスに入ることが可能となった。その背景には、東北地方太平洋沖地震での三陸鉄道の防災施設としての役割や三陸地方特有の地形による移動の困難さ、気候、復旧資金スキーム創設の考え方の工夫などがあり復旧することが可能となったことが明らかとなった。
著者
沼田 宗純 佐藤 唯行 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.897-905, 2012-11-01 (Released:2013-04-17)
参考文献数
1

本研究の目的は,大学と産業界の知恵と資源を有効活用し,わが国を襲う様々な災害から市民の生命と財産を守り,発生する被害の最小化に貢献する新しい魅力ある防災ビジネスの創造と育成である.著者らは,この目的の下,(財)生産技術研究奨励会の特別研究会として,「防災ビジネスの創造と育成のための研究委員会」を設立し,大学研究者と防災ビジネスに興味を持つ企業が相互に防災技術に関する情報を交換し合うとともに,新しい防災ビジネスを展開する上での技術的・制度的課題の抽出と分析を行った.そしてその結果に基づいて解決策を検討・提案し,さらにその解決策を産学協働の新しい防災ビジネスモデルにつなげ,育成するための戦略についても検討した. 本稿では,これらの成果の中から,マーケット全体を俯瞰し,企業の商品戦略や成長戦略を立案できる環境を構築するために,WBSによる「災害俯瞰モデル」を用いた災害情報のプロファイリング結果を紹介する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
アスタティアニ アマリア 川崎 昭如 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.337-341, 2015

2011 年3 月11 日にマグニチュード9.0 の東北地方太平洋沖地震が引き起こした災害を東日本大震災というが,この災害では日本人だけはなく日本に居住する外国人も大きな影響を受けた.東日本から国内外へ退避する外国人が多く発生した.外国人のこの行動は日本の社会経済活動に大きな影響を及ぼした.ところで,中央防災会議では,首都直下型地震(南関東で発生するM7 程の地震)が30 年以内に70%の確率で発生すると予想している.一方,安倍総理の政策により,外国人の労働者の受入を増やす方針と2020 年に東京で開催するオリンピック・パラリンピックにより,日本国内に在住する外国人や観光客が増加する.東日本大震災の被害が繰り替えされないための対策を練っておく必要性がある.本研究ではまず,東京湾北部地震発生時の首都圏,1 都3 県(東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県)で外国人の暴露人口を算出する.そして,1 都3 県と茨城県のウェブサイトを確認し,各都道府県が実施している外国人向けの防災の支援を把握したうえで,在日インドネシア人大使館の聞き取り調査と(留学生除く)在日インドネシア人のアンケート調査を実施し,その分析に基づいて,今後の首都直下地震に向けた外国人の防災対策を提案する.
著者
沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.373-377, 2013

本研究は,東日本大震災直後のゴールデンタイムの報道時間に着目し,分析を行った.その結果,2011年3月13日から通常の娯楽等の番組編成に変わったことが確認された.また,その後の特集番組では,全て池上彰氏による震災関連の解説であることが分かった.<br>今後の大規模災害時において,ゴールデンタイムには視聴者のニーズ,経営上の観点等,番組編成上の検討要素を考慮し,必要があれば娯楽等に迅速に切り替え,多様なステークホルダーのニーズに応えることが重要である.
著者
川崎 昭如 ヘンリー マイケル 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.491-495, 2012

東日本大震災後,短期間に大量の外国人が国内外へ退避したことで,日本国内の社会経済活動に広範な影響がでた.本研究では,外国人の退避行動と災害情報収集過程との関係を明らかにすべく,東日本大震災時に関東地域に居住していた外国人を対象としたオンライン・アンケート調査を実施した.75ヶ国860人の災害情報収集過程と退避行動との関係性を分析し,震災後の情報収集過程の違いがその後の退避行動に与えた影響を定量的に示した.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
目黒 公郎 伯野 元彦
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.p409-468, 1989-03
被引用文献数
5 17

本研究は,非連続体解析法を用いたコンクリートの破壊解析手法を,提案するものである.従来,コンクリートの破壊解析は,主として媒質を均質な連続体と近似して取扱う,有限要素法(FEM)や境界要素法(BEM)などの連続体解析法を用いて行われてきた.しかし,これらの手法は,解析対象物に破壊が発生するまでの解析を主眼とするものであり,破壊発生後の挙動や大変形問題等の解析には,多くの困難を伴う.また,コンクリートの媒質は鋼などに比べて不均質であり,骨材とモルタルという物性の違う物質から成る混合体である.破壊の強度や形状は,コンクリート中の骨材の強度や粒度,その量や分布の影響を受け,更にモルタルの性質によって変化する.媒質を均質な弾性体と近似して取り扱う従来の連続体解析法を用いて,これらの現象をうまく説明することは困難である.これらの現象をうまく表現できる解析手法を提案することは,現在のコンクリートの破壊解析における,1つの大きな課題であると考えられる.ところで最近,電子計算機の計算速度の高速化と記憶容量の巨大化を背景として,解析対象物の媒質を小要素の集合体として取扱う非連続体解析法が,盛んに行なわれるようになってきた.この手法の一つに,Cundallによる個別要素法(Distinct ElementMethod, DEM)があり,先駆的なものとして知られている.しかし,主として土(地盤,石,岩盤を含む)を対象として進められてきた従来のDEM理論では,コンクリートの挙動をうまく表現する事は難しかった.それは従来のDEMでは,骨材をとり囲むモルタルの効果が考慮されていなかったからである.DEM解析において,要素の間隙を埋める物質の力学的モデル化についての研究は,間隙水の効果に関する研究,間隙の粘性土に関する研究等があるが,これらは,モルタルの挙動を表現するモデルとしては適当ではない.そこで本研究では,コンクリートにも対応できる非連続体解析手法として,改良個別要素法(Modified Distinct Element Method, MDEM)を開発し,実際にコンクリートの破壊解析に適用した.MDEMにおいてコンクリート中の粗骨材は円形要素として,モルタルは非線形なバネとして,それぞれ表現した.MDEMでは,媒質を独立した小要素の集合体と考えるので,材料の不均一性も要素のばらつきという形で考慮できる.MDEMは,大変形問題や破壊発生までの解析に加えて,破壊の進行過程までの一連の解析が可能であり,連続体解析法の欠点を補える.また,滑り面の形成やダイレタンシーの効果等が自然と表現される特徴を持つ.更に,巨視的な観点からの破壊モードの解析に加え,個々の骨材間の微視的破壊のメカニズムまで追跡することができる等の点で優れている.ケース・スタディーとして,コンクリート供試体を用いた破壊試験のシミュレーションと,コンクリート構造物の動的破壊解析を行なった.解析結果は,従来の室内実験結果,あるいは地震被害と調和的なものであり,またMDEMならではの見解も得られた.これらの結果から,改良個別要素法(MDEM)が,コンクリートの破壊解析法として有効である事が確認された.A new fracture analysis method of concrete structures is proposed in which concrete is considered a granular assembly. A number of fracture analyses of concrete structures have been made by the finite element method (FFM) in which concrete has been considered a homogeneous and continuous material. But concrete is a complex and extremely heterogeneneous material, it is difficult to analyze its fracture properties by using FEM. On the other hand, the distinct element method (DEM), in which medium has been treated as an aggregation of individuall small elements, has been studied in geotechnical engineering. But the conventional DEM is hardly applicable to the concrete structures because the effect of mortar surrounding gravels has not been considered in this method. We have developed a modified distinct element method (MDEM), and have applied it newly to fracture problems of concrete structures which had not been solved by the conventional DEM. In MDEM, two major constituents of concrete, gravels and mortar, are represented respectively as circular particle elements and nonlinear springs. The heterogeneity of material can be taken into consideration as dispersion of particle elements. This method, MDEM, can follow the total fracture process even after discontinuity of the medium occurs. Nonlinear phenomena such as shear band and the influence of dilatancy are simulated automatically. Not only the overall mode of fracture but also the microscopic fracture mechanism of individual elements are obtained. This newly proposed method, MDEM, is applied to simulate the dynamic fracture behaviors of concrete structures. Numerical results obtained in this study agree well with laboratory tests as well as seismic damages observed during past earthquakes.
著者
山崎 文雄 副島 紀代 目黒 公郎 片山 恒雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.171-179, 1994-08

都市社会の電力依存の高まりとともに,停電によって都市社会が受ける障害の形態も変化しつつある.1991年の台風19号の際には,全国で700万件もの停電が発生し,構造的被害よりも停電によるライフラインの機能損失・機能的被害波及が大きな問題となった.停電による都市生活への影響は,その地域に住む人々の生活様式や産業形態によって大きく異なり,しかも季節・天候などの自然条件と,停電の発生時刻・継続時間などの影響を強く受ける.これは地域別の電力需要特性が,上記のような様々な要因で決定されるためである.したがって本研究では,都市停電の定量的影響度評価への第1ステップとして,電力需要特性から都市部の地域特性の評価を試みた.東京23区を例としてとりあげ,電力需要と地域特性のデータベースを構築するとともに,電力需要から見た都市部の地域特性評価と分類を行った.その結果,都市の電力需要量は地域や時刻,季節などにより様々に変化するが,配電エリア別に見るとその電力消費曲線の特徴により,住宅・オフィス・工場・店舗/飲食店がそれぞれ卓越する,4通りの地域に分類できることがわかった.そしてどのエリアの電力需要も,この4つの構成要素の重ね合わせとして表現できると仮定し,各構成要素の1件当たりの電力需要曲線を回帰分析によって求めた.さらに地域特性と電力需要特性を関連づけるために,寄与率という概念を用いて,そのエリア全体の電力需要量に占める各構成要素の電力需要の割合を求めた.その結果を地図上に示すと,電力需要から求められた,住宅地・オフィス街・工場地帯・繁華街,またこれらの混合地域が,実際とよく一致し,電力の寄与率を用いて地域特性を評価できることが示された.
著者
池永 知史 郷右近 英臣 目黒 公郎
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.13-23, 2017-03-24 (Released:2018-04-27)
参考文献数
24

This study aimed to discuss the feasibility and effect of using the vacant houses not in rental market as temporary shelters for future expected disaster. We conducted a case study in Wakayama prefecture to verify the effectiveness of using such vacant houses on the assumption that Nankai earthquake might happen and cause severe house damage. This paper clarified that (1) some of these vacant houses as temporary shelter could be provided cheaper and faster than prefabricated housing, and (2) making use of them could increase existing housing stocks as temporary shelter approximately by 10%, which would be particularly effective in rural area. Moreover, it was suggested through questionnaire survey that the residents under 60 years old tended to prefer vacant houses to prefabricated housing.