著者
沼田 宗純 國分 瑛梨子 坂口 理紗 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.547-554, 2011

東日本大震災では,特定の市町村への報道の集中,社会的に関心の高い原発事故に対する報道の集中等,適切な災害対応に貢献する報道ではないと考えられる.そこで本研究では,災害対応の循環体系の中で,「いつ,だれに,どんな情報」を伝えると災害対応を迅速かつ効果的に行えるのかを分析し,「効果的な災害対応に貢献する報道モデルの構築」を目指す.本稿では,そのための基礎的な分析として,東日本大震災の発災後10日間におけるテレビ局別に報道された市町村と被害との関係,局別の報道内容を比較する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
沼田 宗純 國分 瑛梨子 坂口 理紗 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.547-554, 2011 (Released:2011-09-07)
参考文献数
4
被引用文献数
1

東日本大震災では,特定の市町村への報道の集中,社会的に関心の高い原発事故に対する報道の集中等,適切な災害対応に貢献する報道ではないと考えられる.そこで本研究では,災害対応の循環体系の中で,「いつ,だれに,どんな情報」を伝えると災害対応を迅速かつ効果的に行えるのかを分析し,「効果的な災害対応に貢献する報道モデルの構築」を目指す.本稿では,そのための基礎的な分析として,東日本大震災の発災後10日間におけるテレビ局別に報道された市町村と被害との関係,局別の報道内容を比較する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
井原 毅 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.367-370, 2010

近年,大きな地震により列車の脱線,高架橋の損壊,軌道変状,盛土の崩壊などの被害が報告されている.幸い鉄道利用者に被害は出ていないが,ダイヤが混み合う時間帯に大地震が発生した場合,鉄道利用者に甚大な被害が出る可能性がある.本研究では,通勤ラッシュ時に走行する列車に衝撃が加わった状況を想定し,楕円形個別要素法による群衆行動解析モデルを用いて満員電車内の乗客の挙動を追跡し,人体に作用する力を考察した.解析の結果,車両が傾くことで乗客に大きな被害が出る可能性があることが示された.また,つり革を増設することで車両の傾きが20度の場合には乗客に作用する力を軽減できることがわかった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
沼田 宗純 井上 雅志 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.257-265, 2018-07-01 (Released:2018-08-01)
参考文献数
3

2016 年4 月14 日21 時26 分に熊本県と大分県で発生した地震では,初動対応における物資輸送に関しプッシュ型の物資輸送が行われた.本研究では,プッシュ型物資輸送のオペレーションの課題を整理し,円滑なプッシュ型物資輸送を実現するための要件定義を行った.大規模災害時に単に物資を被災地に送れば良い訳ではなく,要件が成立して初めてプッシュ型の物資輸送も機能する.首都直下地震や南海トラフなどの大規模災害に対してもプッシュ型の支援は必要となるが,円滑に実施するためにも本論で定義した要件の確認は必須である.
著者
沼田 宗純 原 綾香 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.359-363, 2013-07-01 (Released:2013-12-24)
参考文献数
4

東日本大震災のような広域的な災害ほど,被害の全容を掴むことは容易ではないため,テレビ報道で取り上げられた市町村には積極的な支援が届き,逆に,報道されない市町村に対しては支援が不十分となる等,テレビ報道の有無が災害対応に影響を及ぼすことがある.そこで本研究では,報道された市町村と支援の関係を明らかにするために,報道と義援金の関係,報道とボランティアの関係を分析した.その結果,被害量とボランティア数や義援金総額は必ずしも比例関係にあるわけではなく,被害が大きいにも関わらず,ボランティア数や義援金総額が少数・小額の市町村が多く存在することがわかった.また同規模の被害量であっても,市町村によってボランティア数や義援金総額は大きな偏りが生じている.これは,特定の市町村に報道が集中していることが原因と考えられる.
著者
梅原 明彦 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.393-396, 2014-07-01 (Released:2014-09-27)
参考文献数
4

東日本大震災では被災地域内の火葬場の処理能力を遥かに上回る死者数が発生し,広域火葬計画の策定が進んでいなかったことや地域防災計画に遺体処理に関する項目を定めていなかったことから,大量の遺体の処理に大きく手間取り,宮城県内では仮埋葬という方法が取られた自治体があったことが分かった.この震災を機に遺体処理計画を検討する自治体が増えたが,その自治体の数はまだまだ少なく,被災地でもこれから検討を始める自治体が多いのが現状である.日本での災害時において犠牲者の遺族となった方々は,平常時よりもより迅速で且つ懇切丁寧な遺体処理を求める.しかし,遺族心情に配慮した方法はまだ十分に確立されていないため,遺体処理業務は防災計画において早急に改善を図らなければならない.
著者
藤生 慎 沼田 宗純 高田 和幸 大原 美保 目黒 公郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.4_189-4_200, 2012

本稿は東北地方太平洋沖地震で被災した三陸鉄道の現地調査やヒアリング調査を通じて、三陸鉄道の復旧・復興のプロセスをまとめたものである。当初、三陸鉄道は被害の状況から復旧は絶望視されていたが、沿線住民の復旧の強い要望や岩手県、沿線自治体の要望により新たな復旧資金スキームを創設し復旧のプロセスに入ることが可能となった。その背景には、東北地方太平洋沖地震での三陸鉄道の防災施設としての役割や三陸地方特有の地形による移動の困難さ、気候、復旧資金スキーム創設の考え方の工夫などがあり復旧することが可能となったことが明らかとなった。
著者
沼田 宗純 佐藤 唯行 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.897-905, 2012-11-01 (Released:2013-04-17)
参考文献数
1

本研究の目的は,大学と産業界の知恵と資源を有効活用し,わが国を襲う様々な災害から市民の生命と財産を守り,発生する被害の最小化に貢献する新しい魅力ある防災ビジネスの創造と育成である.著者らは,この目的の下,(財)生産技術研究奨励会の特別研究会として,「防災ビジネスの創造と育成のための研究委員会」を設立し,大学研究者と防災ビジネスに興味を持つ企業が相互に防災技術に関する情報を交換し合うとともに,新しい防災ビジネスを展開する上での技術的・制度的課題の抽出と分析を行った.そしてその結果に基づいて解決策を検討・提案し,さらにその解決策を産学協働の新しい防災ビジネスモデルにつなげ,育成するための戦略についても検討した. 本稿では,これらの成果の中から,マーケット全体を俯瞰し,企業の商品戦略や成長戦略を立案できる環境を構築するために,WBSによる「災害俯瞰モデル」を用いた災害情報のプロファイリング結果を紹介する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.373-377, 2013

本研究は,東日本大震災直後のゴールデンタイムの報道時間に着目し,分析を行った.その結果,2011年3月13日から通常の娯楽等の番組編成に変わったことが確認された.また,その後の特集番組では,全て池上彰氏による震災関連の解説であることが分かった.<br>今後の大規模災害時において,ゴールデンタイムには視聴者のニーズ,経営上の観点等,番組編成上の検討要素を考慮し,必要があれば娯楽等に迅速に切り替え,多様なステークホルダーのニーズに応えることが重要である.
著者
沼田 宗純 高津 諭 山内 康英 中井 佳絵 目黒 公郎 伊藤 哲朗 平松 進 伊妻 伸之 赤津 善正 佐藤 勝治 二上 洋介 大関 将広 土井 祐司 田中 朝子
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.471-480, 2016-11-01 (Released:2016-11-29)
参考文献数
3

本研究は,石巻市における避難訓練の結果を報告するものである.2015 年11 月15 日(日曜日,天候:雨)に石巻市総合防災訓練において,各避難所と災害対策本部の情報共有を支援し,効率的な避難所運営を実施することを目的として避難所情報共有システムCOCOA を用いた検証を行った.COCOA は沼田研究室が開発している避難所情報共有システムである.本訓練により,各避難所における避難者数をリアルタイムに把握でき,効率的に避難者名簿も作成されるため要配慮者の把握も容易にできるなど,時系列的な状況変化に応じた効率的な避難所運営が実施できることが確認できた.
著者
井原 毅 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.367-370, 2010-07-01 (Released:2010-11-25)
参考文献数
3

近年,大きな地震により列車の脱線,高架橋の損壊,軌道変状,盛土の崩壊などの被害が報告されている.幸い鉄道利用者に被害は出ていないが,ダイヤが混み合う時間帯に大地震が発生した場合,鉄道利用者に甚大な被害が出る可能性がある.本研究では,通勤ラッシュ時に走行する列車に衝撃が加わった状況を想定し,楕円形個別要素法による群衆行動解析モデルを用いて満員電車内の乗客の挙動を追跡し,人体に作用する力を考察した.解析の結果,車両が傾くことで乗客に大きな被害が出る可能性があることが示された.また,つり革を増設することで車両の傾きが20度の場合には乗客に作用する力を軽減できることがわかった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
山本 憲二郎 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.561-564, 2014-11-01 (Released:2015-01-15)
参考文献数
2

世界の約6割もの人々が組積造構造物を住宅として使用している.組積造構造物の問題点は,地震に対する脆弱性が非常に高い点にあり,これまでに発生した地震による組積造構造物の崩壊で,世界中で多くの人的被害が出ている.組積造構造物の耐震性能を向上させるために,多くの技術的方法が開発されてきた.しかし,それらの方法は,実際の組積造構造物に適用する際,多くの時間と労力を必要とし,更に,多くの方法は新築の組積造構造物に対してのみ適用できる技術である.これらの問題は,技術を普及する上での妨げとなっている.そこで本研究では,既存・新築の組積造構造物の両方に適用でき,更にこれまでの方法と比較して,圧倒的に施工が簡単な耐震補強方法を提案する.この方法に使用する材料は,「SG-2000」というガラス繊維を混ぜ込むことにより強化された特殊繊維塗料である.本稿では,この材料の組積造構造物の耐震補強への適用可能性と効率的な塗布方法に関する実験的な検証結果を紹介する.
著者
沼田 宗純 近藤 伸也 井上 雅志 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.755-763, 2011

本研究では, 広域的災害に対し, 地域防災計画の記述の統一化が広域的応援を円滑かつ効果的に実施に繋がるのではないかとの立場に立ち, 自治体間での地域防災計画の記述の違いについて考察し, 実効性の高い広域連携体制のあり方の方向性を示そうとするものである.そのために, 1995年兵庫県南部地震と2004年新潟県中越地震における支援の実態について既往の研究を参考に, 広域的支援の有り方を検討する際のフレームワークを整理し, 広域的支援における災害対応業務について考察し, 自治体間の地域防災計画を比較することで, その記述の違いについて考察している.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
井上 雅志 福岡 淳也 大西 修平 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.283-288, 2018

<p>地域防災計画の多くは,記載事項が膨大なため,有事の際,職員が災害対応に必要な情報を即座に探し出すことが困難であり,過去の災害においても有効に活用されていないことが多い.本研究では,地域防災計画の記述を可視化すべく,「災害対応フロー図」を作成し災害対応業務を体系的に整理すると共に,熊本県の地域防災計画を標準化した.加えて,これを効率的に運用するために,業務実施上の参考情報をまとめた詳細シートデータベースを構築した.また,作成された災害対応業務フロー図について,部署間の連携関係をネットワークの形で可視化することで,業務における担当部署と,部署間の関係を一目で確認できることを示した.</p>
著者
沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.401-405, 2013

本稿では,福島県矢吹町の防災体制の再構築を目的に,その初めの取り組みとして,東日本大震災における課題を整理するものである.東日本大震災の災害対応の課題を踏まえ,以下が論点となった.(1)見直し範囲は,地域防災計画,災害対策初動マニュアル,避難所マニュアルとして各種マニュアルの一元化を行う.また,(2)見直しの視点は,震災発生時の初動体制の抜本的見直し,災害対策本部体制の抜本的見直し,必要物資の確保,必要資機材の確保(インフラ応急対応等),必要施設設備の確保(給水施設,情報伝達手段,停電時対応設備等),避難所の見直し(耐震化・充実化,設営数,基準,ルールづくり等)等である.
著者
伊藤 哲朗 奥村 徹 沼田 宗純
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.319-326, 2018-07-01 (Released:2018-08-01)
参考文献数
1

2015 年に発生したパリ同時多発テロにおいては,劇場やカフェ,レストランでのテロリストの銃撃により,多くの死傷者を出す事態となったが,フランス政府及び医療機関の迅速的確な危機管理対応および医療体制により,死傷者とりわけ死者の発生を最小限に食い止めることができた.また,フランスで開催されたEURO2016 サッカー大会においても危惧されたテロの発生を封圧した.2020 東京オリンピックを控えテロの脅威が高まる我が国においても,事件発生時の危機管理体制及び医療体制を考えることは極めて重要であり,フランスの事例及び教訓に学ぶ.
著者
藤生 慎 沼田 宗純 大原 美保 目黒 公郎
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.96-105, 2013 (Released:2013-06-18)
参考文献数
11
被引用文献数
2

本稿は東北地方太平洋沖地震で被災した住家に対して実施された建物被害認定調査の実施状況をアンケート調査を通じてまとめたものである.アンケート調査では,調査期間,実施体制,支援体制,トレーニング体制などを明らかにした.分析の結果,各自治体とも発災後1か月以内に調査を開始しているが,1ヶ月以降に調査方針の変更などがあり,現場に混乱が生じたことが明らかとなった.また,過去の地震災害で実施された建物被害認定調査で指摘されている問題が解決されることなく今回の調査でも生じていた.特に判定要員のトレーニングは,調査実施前に短時間で実施されており,調査結果に対する影響が少なからず生じている可能性が考えられることも明らかとなった.
著者
村上 友基 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_506-I_512, 2014
被引用文献数
2

地震による石垣構造物の崩壊を防ぐためには,事前に耐震性能を把握し,その性能が不十分な場合は,適切な耐震補強を実施することが不可欠である.そこで本研究では,2次元拡張個別要素法を用いて石垣構造物の地震動応答解析を行い,その結果を踏まえて,耐震補強策を検討した.具体的には,道路橋示方書の地震動データを用いて解析し,その時の石垣の挙動を把握した.耐震補強策として,施工範囲の短縮と景観の維持を優先して,石垣に対する耐震補強法としてアンカー補強を選択した.<br> その結果,無補強時とアンカー補強時の比較に加え,アンカー補強の違いによるパターン分けで,石垣構造物に対する耐震補強の必要性と補強パターンによる地震動応答の変化の傾向を示し,アンカー補強の有効性を確認した.
著者
稲葉 丈 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.311-315, 2015-07-01 (Released:2015-07-31)
参考文献数
2

東日本大震災では多くの自治体が,時間の経過とともに目まぐるしく変化する災害対応業務を把握できず,十分な対応ができなかった.その理由の一つとして,大規模災害発生時の被害規模を推定し,これに応じた災害対応業務量を定量的に評価するモデルが存在していないことが挙げられる.そこで本研究では,東日本大震災における各自治体の被害規模と災害対応の実績をもとに,災害時に発生する災害対応業務量を評価する「災害対応業務量の評価式」を提案した.また,各業務フローの前後関係を明らかにすることで,災害対応の時系列的変化の把握を可能とする「災害対応業務量の評価モデル」も構築した.これにより,人材配置のアルゴリズムを検討しモデルに反映することで,効率的な人材配置を具体的にシミュレーションする環境を構築した.
著者
佐々木 奈央 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.305-310, 2015

本研究では,福祉施設の立地状況が地域の要援護者支援に与える影響を調査する.調査を通じて,危険地への立地を防ぐ施策や,福祉施設の立地状況を考慮した在宅の災害時要援護者支援対策に関する知見を抽出する.本研究では立地状況を「土砂災害警戒区域か否か」というハザード的な視点からだけでなく,人口や土地利用等のコミュニティ的な視点からも着目した.その結果,立地状況は「職員の参集率」と「地域住民から得られる支援の可能性」を通じて,地域の要援護者支援に影響を及ぼす可能性があることがわかった.また,コミュニティ的な特徴に応じて施設立地が規定され,その結果として危険区域に立地している側面も見いだされた.以上より,危険地への立地を防ぐ施策として,警戒区域内施設の分類フローに基づく段階的な立地誘導・規制の枠組みを提案した.また,地域住民との連携や施設の相互応援協定等,施設の立地状況を考慮した要援護者支援策の方向性の検討フローを提案し,多様な共助の方法の可能性を示した.