著者
沼田 宗純 國分 瑛梨子 坂口 理紗 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.547-554, 2011

東日本大震災では,特定の市町村への報道の集中,社会的に関心の高い原発事故に対する報道の集中等,適切な災害対応に貢献する報道ではないと考えられる.そこで本研究では,災害対応の循環体系の中で,「いつ,だれに,どんな情報」を伝えると災害対応を迅速かつ効果的に行えるのかを分析し,「効果的な災害対応に貢献する報道モデルの構築」を目指す.本稿では,そのための基礎的な分析として,東日本大震災の発災後10日間におけるテレビ局別に報道された市町村と被害との関係,局別の報道内容を比較する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
酒見 悠介 森野 佳生
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.159-167, 2019-03-01 (Released:2019-03-30)
参考文献数
18

スパイキングニューラルネットワーク(SNN) は脳に倣ったモデルであり,活動電位(スパイク) による情報処理が可能である.近年,より高い情報処理能力を目指して,SNN を用いた深層学習が注目されている.既存の深層学習のアルゴリズムをSNN に直接導入することは数理的に困難であり,様々な新規手法が提案されつつある.本稿はSNN における深層学習アルゴリズムを主に数理的な観点から整理することを目的にしており,特に,教師あり学習,教師なし学習の点から解説する.教師あり学習では主に誤差逆伝搬アルゴリズムについて,教師なし学習ではSpike-Timing-Dependent Plasticity に基づくアルゴリズムについて解説する.
著者
年吉 洋 曹 崀 合原 一幸
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.139-140, 2020-03-01 (Released:2020-04-02)
参考文献数
1

2020 年1 月から3 月の約50 日間にわたって中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の累積感染者数と累積死亡者の推移を追跡したところ,従来の報告には見られない特徴として,暫定死亡率(最終的な死亡率ではなく,その日までの累積死亡者数と累積感染者数の比)の推移データには極小点が見られ,かつ,そのタイミングは死亡者がピークとなる時期よりも8 日ほど早いことが分かった.また,統計データを近似したシグモイド曲線からも同様に,死亡率曲線に極小値が現れる条件が見出された.
著者
桑野 玲子
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.575-578, 2010

2009年6月17日,東京大学生産技術研究所コンベンションホールにて,英国インペリアルカレッジ名誉教授のJohn.B.Burland氏による講演会"Rescuing the Leaning Tower of Pisa -the inside story"が開催された.イタリアのピサの斜塔は,12世紀の建設初期段階から傾き始めていたが,1990年には倒壊が危惧されついに観光客に対して閉鎖される事態に至った.Burland教授は,斜塔の安定に関して召集された国際検討委員会に委員として参加され,基礎の安定の見地から,観光客に気づかれない範囲で傾きを戻して恒久的安定を確保するという困難な課題に取り組まれた.建設当初から断続的に南側に傾き続けてきたピサの斜塔は,その800年におよぶ歴史の中でおそらく初めて北側に少し回復し,倒壊という破滅的状況を間一髪で免れ,検討委員会他多くの人々の10年に及ぶ斜塔との格闘がようやく終結した.講演会では,その一連の取組みについて,ご紹介いただいた.本報告は,その講演内容の概要を記すものである.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
井原 毅 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.367-370, 2010

近年,大きな地震により列車の脱線,高架橋の損壊,軌道変状,盛土の崩壊などの被害が報告されている.幸い鉄道利用者に被害は出ていないが,ダイヤが混み合う時間帯に大地震が発生した場合,鉄道利用者に甚大な被害が出る可能性がある.本研究では,通勤ラッシュ時に走行する列車に衝撃が加わった状況を想定し,楕円形個別要素法による群衆行動解析モデルを用いて満員電車内の乗客の挙動を追跡し,人体に作用する力を考察した.解析の結果,車両が傾くことで乗客に大きな被害が出る可能性があることが示された.また,つり革を増設することで車両の傾きが20度の場合には乗客に作用する力を軽減できることがわかった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
加藤 孝明
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.429-432, 2012

2012年1月大手新聞社は科学的知見をもとに「マグニチュード (M) 7級の首都直下地震が今後4年以内に約70%の確率で発生する」と報道した. その後追随したマスコミは, 「東京湾北部地震」を「首都直下地震」として取り扱って報道した. 明らかな誤解である.<br>ここでいう「首都直下地震」は, 首都圏のどこかで起こる直下型地震のことをいう. 一般に直下地震の強震範囲は限定され, 首都圏全体が強震するわけではない. したがって, ある場所から十分に遠くで地震が起こっても被害は生じない. 4年で70%の発生確率の地震は, そういう地震をすべて含んだものである. 「東京湾北部地震」の発生確率ではないし, ある特定の場所が強震する確率ではない.<br> 今回の一連の報道は, 一見, 社会全体として防災意識を高め, 防災対策の推進に寄与したと言えそうだが, その一方で, 負の側面がある. 科学的な知識が正しく社会に伝わっていない. 対策推進に寄与したことは免責にならない. 科学的に正しい知識をもって防災意識を啓発し, 同時に防災対策を推進できる状況をつくることが本来の状況である.<br>本稿では, 1月23日報道の情報ソースのいう確率とその後の報道の確率の違いが異なることを解説した上で, 「M7級首都直下地震の発生確率」と「首都圏内のある特定の場所 (或いは, 地域) がM7級首都直下地震によって強震する確率」との関係を示し, 地震の発生確率の適切な提示の仕方について論考する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
デビ マリア ベルナデット カリナ 加藤 孝明
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.247-250, 2018-07-01 (Released:2018-08-01)
参考文献数
19

本論文では,既存の災害復興理論および復興評価と,コミュニティレベルにおける実際の復興事例との比較について述べる.災害復興評価に関する既往研究は,住宅やインフラなどの定量的な指標に焦点を当てている.しかし,実際の復興事例を通じた観察と包括的な観点を含めた復興評価が必要である.コミュニティの見解と既往研究との違いに基づいて,理想的な復興評価は利害関係者を含めた復興の過程と物理・社会・環境などのすべての側面における復興結果に関して,より質的な視点を考慮すべきである.
著者
牧野 浩志
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.133-139, 2011

世界の最先端を走っている日本の路車協調システムであるが, ETCに使われている狭域通信(DSRC)方式でマルチアプリケーションを動かすことのできる機能を持ったITS車載器とITSスポットが登場し,新しいステージを迎えた.このITS車載器は,これまでのカーナビやVICS,ETCという基本機能に加え,広域のダイナミックルートガイダンスが可能となったり,世界で初めての安全運転情報提供機能が搭載されたり,インターネット接続の実現による地図更新やローカル観光ナビとしての活用,プローブ機能による情報収集機能,クレジットカード決済機能の追加など,これまでの公共サービスだけでなくロードサイドのガソリンスタンドやファーストフードなどの民間サービスにも活用できる様々な可能性を秘めている.新しいツールの誕生で日本のITSが社会の課題をどのように解決していくのか,民間サービスでの展開,電気自動車との関係,都市のスマートな発展など,路車協調システムのロードマップについて論じる.
著者
ララメンディ フロリアン 吉田 昭太郎 ジャラベール ロラン 藤田 博之 竹内 昌治 ポール オリバー
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.521-524, 2015

This paper introduces a new technique for patterning functionalization layers on substrates with hightopogra phy. The method is based on a parylene-C template shaped by a structured, sacrificial photoresist layer and attached to the substrate where functionalization is not intended. After photoresist removal and surface function ali za tion, the parylene layer is peeled off, leaving all areas initially covered by the sacrificial polymer functionalized. The technique has several advantages: (i) In contrast to microcontact printing, it allows surfaces with complex topographies to be functionalized; (ii) complex function al ization patterns are possible; (iii) the parylene structure can be reutilized. We successfully demonstrate the technique with the guided growth of neuron-like PC12 cells on honeycomb-shaped protein patterns on micro pillars and microwells. The range and limits of the technique are analyzed and discussed in detail.
著者
アスタティアニ アマリア 川崎 昭如 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.337-341, 2015

2011 年3 月11 日にマグニチュード9.0 の東北地方太平洋沖地震が引き起こした災害を東日本大震災というが,この災害では日本人だけはなく日本に居住する外国人も大きな影響を受けた.東日本から国内外へ退避する外国人が多く発生した.外国人のこの行動は日本の社会経済活動に大きな影響を及ぼした.ところで,中央防災会議では,首都直下型地震(南関東で発生するM7 程の地震)が30 年以内に70%の確率で発生すると予想している.一方,安倍総理の政策により,外国人の労働者の受入を増やす方針と2020 年に東京で開催するオリンピック・パラリンピックにより,日本国内に在住する外国人や観光客が増加する.東日本大震災の被害が繰り替えされないための対策を練っておく必要性がある.本研究ではまず,東京湾北部地震発生時の首都圏,1 都3 県(東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県)で外国人の暴露人口を算出する.そして,1 都3 県と茨城県のウェブサイトを確認し,各都道府県が実施している外国人向けの防災の支援を把握したうえで,在日インドネシア人大使館の聞き取り調査と(留学生除く)在日インドネシア人のアンケート調査を実施し,その分析に基づいて,今後の首都直下地震に向けた外国人の防災対策を提案する.
著者
沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.373-377, 2013

本研究は,東日本大震災直後のゴールデンタイムの報道時間に着目し,分析を行った.その結果,2011年3月13日から通常の娯楽等の番組編成に変わったことが確認された.また,その後の特集番組では,全て池上彰氏による震災関連の解説であることが分かった.<br>今後の大規模災害時において,ゴールデンタイムには視聴者のニーズ,経営上の観点等,番組編成上の検討要素を考慮し,必要があれば娯楽等に迅速に切り替え,多様なステークホルダーのニーズに応えることが重要である.
著者
高野 照久 松下 侑輝 小野 晋太郎 川崎 洋 池内 克史
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.99-104, 2015

自動車のバックカメラや監視カメラで,魚眼カメラの搭載が広がっている.このような魚眼カメラは一般のデジタルカメラに比べて解像度が低く,レンズの収差等による画質の劣化が起こりやすい.本稿では,魚眼カメラの画像を複数枚使った超解像処理により,魚眼カメラで欠損しやすい高周波成分を復元する手法を提案する.そのために,魚眼カメラの歪みを補正して位置合せし,歪補正後の画像で超解像を行う.超解像に用いる劣化行列には,レンズのブラーと歪補正による拡大・縮小を合わせたブラー行列を用いる.実際に魚眼レンズを取り付けたデジタルカメラで撮影した画像を用いて実験を行い,本手法の有効性を確認したので,その結果を報告する.
著者
川崎 昭如 ヘンリー マイケル 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.491-495, 2012

東日本大震災後,短期間に大量の外国人が国内外へ退避したことで,日本国内の社会経済活動に広範な影響がでた.本研究では,外国人の退避行動と災害情報収集過程との関係を明らかにすべく,東日本大震災時に関東地域に居住していた外国人を対象としたオンライン・アンケート調査を実施した.75ヶ国860人の災害情報収集過程と退避行動との関係性を分析し,震災後の情報収集過程の違いがその後の退避行動に与えた影響を定量的に示した.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
本間 千尋 本間 裕大
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.293-296, 2016-07-01 (Released:2016-07-29)
参考文献数
4

明治期に日本に移入された西欧モダンのピアノ文化は,戦後はライフスタイルの都市化に伴い全国的に浸透した.日本では子どもに楽器の演奏技術を学ばせる際にはピアノを選ぶ場合が多く,我々は自国の伝統楽器よりも西欧の楽器であるピアノの方に親しみを感じる.また現在の日本では,ピアノの経験者や国際コンクールの参加者は本場西欧を凌ぐ程になり,日本におけるピアノ文化は成熟期を迎えていると言えるだろう.このように戦後日本の都市化と不可分の関係にあり,多くの人々が趣味やレッスンで経験するようになったピアノ文化であるが,日本においてピアノ文化に関する研究は多くはない.そこで,本研究では,高度経済成長期が終焉した1980 年代以降のピアノ文化の受容を,質的調査を用いて検討し,それを踏まえた上でコンペティションデータを用い数理的解析から明らかにする.こうした視点からピアノ文化を検討することは,ピアノ文化の分析に新たな知見をもたらしてくれることが期待でき,また高度経済成長期終焉以降の日本社会の特質を垣間見ることにもなるだろう.
著者
近江 崇宏
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.151-155, 2018-05-01 (Released:2018-05-30)
参考文献数
11

近年,高頻度金融データと呼ばれる取引単位の大規模データが利用可能になったことを背景として,このようなデータを解析するための手法が求められている.その中で最近,点過程が高頻度金融データを解析する有用な手法として注目を浴びている.点過程はある注目する事象が発生するタイミングを記述する確率モデルであり,その一種であるHawkes(ホークス)過程は実際に観測されるようなクラスター状に起こる取引や注文の発生パターンを再現できる.この解説ではこのような点過程を用いたモデリングについての簡単なレビューを行うとともに,それを用いた高頻度金融データの解析に関する私たちの研究についての解説を行う.