著者
塩谷 隆信 佐竹 將宏 佐々木 昌博 小泉 昭夫
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病:hereditary hemorrhagic telangiectasia ; HHT)は,1)遺伝的発生,2)皮膚・粘膜,内臓の多発性末梢血管拡張,3)各部位からの反復する出血を3主徴とする疾患である.本症は,末梢血管拡張,その部位からの出血が種々の臓器に出現する多臓器疾患であるために臨床症状が極めて多岐にわたり,患者は内科のみならず,外科,耳鼻咽喉科,皮膚科,歯科など極めて多くの科を初診する.さらに,合併する脳動静脈奇形あるいは,肺動静脈奇形の破綻により致死的となることも希ではない.本研究は,日本におけるHHTの発生頻度・罹病率について遺伝疫学的に検討を行い,本疾患による合併症の予防,治療を呼吸リハビリテーション(リハビリ)という観点から考案し,さらに将来的には遺伝子治療の足がかりを探ろうとするものである.日本におけるオスラー病の遺伝子異常は下記のごとくであった.A G to C transvertion at the splicing donor site of intron 3 (Inv3+1G>C) in one family, one base pair insertion (A) at nucleotide 828 (exon 7) of the endoglin cDNA in two large families (C.828-829 insA), and a four base pair deletion (AAAG) beginning with nucleotide 1120 (exon 8) of the endoglin cDNA (c.1120-1123 delAAAG) in one family. The insertion of A in exon 11 (c.1470-1471 insA) mutation found in one familyHHTに合併した肺動静脈奇形に対する呼吸リハビリは,そのプログラムがないことより実際には行われていない現況にある.また,肺動静脈奇形に対して肺動脈塞栓術が施行された後の呼吸リハビリ・プログラムも示されていない.佐竹は,高齢COPD患者に対する運動療法プログラムを考案した(佐竹他,COPD FRONTIER, 2006).上述の55歳男性HHT症例に対して佐竹の呼吸リハビリ・プログラムを施行したところ非常に有用で患者は通常の日常生活に復帰した.この呼吸リハビリ・プログラムはHHTに合併した肺動静脈奇形に対して応用可能であると考えられた.