- 著者
-
佐々木 正晴
- 出版者
- 弘前学院大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1998
1.早期開眼手術後における定位・移動行動の形成過程開眼少女YKは,生後73日目に両眼の先天性白内障の手術を受け,2001年で9歳になる。聴覚障害(推定聴力損失80-90dB)、心臓疾患(心房中隔欠損等)を伴う。われわれはその6年前にYKと出会い,YKが小学校入学以降組織的な関わりを続けてきた。その視・運動系活動,移動行動の状況を5年前と現在とで対比させると,【5年前】触覚(手)の支えなしに立ち上がることができない。仰向けに寝る姿勢でいることが多く,その姿勢で自分の手や手に持つ物を眼前で動かす。移動の際,仰向けに寝る姿勢のまま手や足で床面を四方に進む。夜の屋外での花火に視線を向けることはないが,テレヒ画面上に映る花火の光をテレビの両端に両手を添えてその所在を捉えて追視する。【現在】触覚の支えなしに立ち上がり,歩行により移動する。場所により他者と手をつながずに一人で歩くことができる。ただし,繰り返し歩いている場所と初めて行く場所とでは路面の段差,陰に対してその対処の仕方を変える。繰り返し歩くことを積み重ねて着実に移動空間が拡大している。2.視野遮蔽,視野変換,視野制限事態における移動空間と操作空間の形成過程本報告者(佐々木)が数日間アイマスク,逆さめがね,視野制限ゴーグルをかけて移動行動と操作行動の形成過程を探索し,それらの結果を開眼受術者の視覚形成過程と比較した。その結果,1)視野遮蔽・アイマスク事態における移動行動と開眼者における形の弁別行動との形成過程において,対象の外郭を基準点によりつなげる,2)逆さめがね・視野変換における移動行動と開眼者における立体の弁別行動の形成過程において,各視点から得られた情報を統合する,という共通点が見出された。