著者
佐々木 能章
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.35, pp.119-129, 1985-05-01 (Released:2009-07-23)
著者
佐々木 能章
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.12-18, 1998-09-07 (Released:2017-04-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1

自律の概念は生命倫理において中心的な役割をもっている。この概念は本来、自分で法を設定しそれに自分で従うということを意味していたが、カント以降、個人の意志の自律という形で理解され、それが現代の生命倫理の議論にも受け継がれている。自律にとっては、その本質的規定とともに、自律が尊重されるという原則が実効的であることが必要となる。この原則を保証するためには、単なる相互承認だけでは不十分で、共通の価値が根本で共有されていなければならない。自己決定は決して無制限に認められるわけではなく、その範囲を画定するためにも共通の価値が必要となる。この価値は、人間の有限性を自覚するところから試行的に導かれるもので、その限りの普遍性を確認していくようなものである。こうして、自律は個人で完結するものではなく、共同的なものであるという性格を有していることになる。