著者
佐川 佳之
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.47-67, 2010-11-30 (Released:2014-07-03)
参考文献数
23
被引用文献数
3

フリースクールに関する従来の社会学的研究において,フリースクールの支援者は,脱学校や不登校の脱医療化を主張し,不登校児の「受容と共感」の支援を行う担い手として認識される傾向にある。だが,支援者が社会的に流通する不登校支援の言説や役割をいかに解釈し,活動を行っているのかといった支援者側の視点からの分析は充分になされていない。本稿は,支援者の不登校児との関わりに伴う感情経験の過程に注目し,民族誌的な視点からフリースクールの支援の複雑な実態に迫るものである。 不登校支援において,支援者は「受容と共感」の感情規則に基づいた支援を求められ,その関わりを通じて不登校児の安心の喚起を試みる。しかし,その実践は常に成功するわけではなく,生徒との関わりの過程の中で問題が顕在化する。本稿は,その事例として生徒の振る舞いと「不安」への対処から生じる,「受容と共感」の感情規則との葛藤の経験を取り上げ,検討する。この問題に対して,支援者はフリースクールを含めた不登校支援において広く流通する「障害」の言説を接合し,生徒を差異化することで葛藤を修復すると同時に,既存の支援のあり方を再構成し,生徒個々に対応した支援を実践している。こうした一連の過程からすれば,フリースクールの支援とは,ローカルな社会状況の展開に応じて,新たな支援のあり方を再構成するという動的過程として再定位できる。
著者
佐川 佳之
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.22, pp.222-233, 2009-07-25 (Released:2013-03-28)
参考文献数
15

The purpose of this paper is to sociologically examine the caring culture in free schools. In previous studies, free schools have been recognized as self-help groups for school non-attendees to reconstruct their negative self-narrative to an active one, a place where they can change the meaning of school refusal. Free school supporters are seen as significant others who help non-attendees in realizing these changes. But in fact the supporters do not just engage in such a narrative therapeutic care, but also conduct passing-care that avoids narrative construction. This paper suggests that these contrastive approaches to care are achieved by the cultural factor of the secret and the factor can cause the group to hold other people than school non-attendees.