著者
佐藤 嘉夫 浜岡 政好
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

超高齢化が進行する中山間地域の集落自治会への住民の期待と参加意識は高いが、限られた地域資源と人材不足から、軽度の見守りやサロン活動等は、広くおこなわれているが、集落の共同事業とは異なる性質を有する個別援助活動は広がっていない。伝統的家族規範が支配的な中で、集落自治会の福祉的機能を高めるためには、ローカル・ガバナンスの視点に立った、地域福祉のメインシステムとサブシステムの連結を図る「新たな公共」の創出が不可欠である。
著者
細江 達郎 佐藤 嘉夫 青木 慎一郎 細越 久美子 小野澤 章子 糸田 尚史
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

引退期における高齢者の非適応問題を、(1)団塊世代の追跡調査、(2)高齢者万引きへの集中的調査で確認した。(1)は、深刻な非適応への移行が予想される対象者の状況が確認された。周辺者の保護的受け皿・出身地への回帰可能性の有無が大きな要因であった。(2)については、高齢万引き犯の大半は孤独な高齢者による偶発的なものであり、高齢者を支援する仕組みの脆弱さによるものが多い。総じて、高齢者の非適応問題として、孤独死など重篤な状態や常習犯罪者に移行する前段階・中間形態などがみられる。こうした問題への対応は、行政施策のみならず、一般市民が高齢者と関わる手段の可能性の発掘が必要である。
著者
浜岡 政好 岡崎 祐司 鈴木 勉 関谷 龍子 高橋 憲二 佐藤 嘉夫
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

超高齢化が進むなかで地域コミュニティの維持と高齢者等への生活支援がいっそう困難化してきている。そのために地域コミュニティの再編成と行政による地域コミュニティへの支援が強化されている。2つの自治体ではともに小地域単位にコミュニティセンターを設け、住民の自治活動をきめ細かく支援する仕組みを作りつつあった。またNPOなどの非地縁型の組織は高齢化した地域コミュニティの生活課題の一部をカバーしつつあるが、まだ十分に補完機能を果たしているとはいえない。
著者
佐藤 嘉夫 野口 典子
出版者
会津大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

豪雪・過疎・超高齢化山村における分散・孤立した高齢者のみ世帯の生活は、除雪、家屋の維持、火災等に対する安全・防犯、通院などの交通、日常生活の利便性など生活の全面にわたり大変厳しいものがある。人的資源の流出に加え、過疎化の進行に伴う財政悪化や投資効率の低下による公共サービスの脆弱化がその背景にある。それを補う形で残村高齢者と他出子と密度の高い親族ネットワークが形成されている。他出子の居住地の違いによってその緊密度や交流・援助の手段に違いは見られるがそれはさほど大きなものではない。その内実をなすものは、老親に対する精神的・経済的・身体的扶養と「家」(稼業・家作、墓、親族関係)の継承、郷土への愛着などである。しかし、他出子の帰郷への直接的な動機づけとしては、そうした所与の客観的条件よりも、他出子側の主体的条件に拠るところが大きい。他出子家族内の子供の成長・自立(就職、結婚)、帰郷後の仕事・役割・生きがいの有無、帰郷にたいする家族の同意などである。比較対象群として行った、冬季間(4〜5ケ月)に他出子世帯と同居する「出ぐらし」高齢者世帯の調査によると、残村高齢者の自立の低下による通院や要介護の高まりが、他出子の帰郷への要因とはならずむしろ高齢者の「引き取り」(村外流出)を促していることにもそれは示されている。また、帰郷後の不安として上げられているのは、先のものの他、自分の老後とりわけ介護問題や人間関係でありその点でも、他出子は帰郷を自らの問題として受け止めているということが分かる。したがって、具体的に帰郷を考えている1割弱、漠然とした願望のものも含めて4割弱にも上る帰郷意向をもつ他出子の帰郷がどれだけ現実性を帯びるかは、現存の高齢者と他出子の親族ネットワークへのさまざまな形の支援に加え、村と他出子の早期からの情報交換・交流と幅広い高齢者のためのまちづくりにある。高齢二世代家族の再生の条件もそこにある。