著者
細江 達郎 青木 慎一郎 細越 久美子 糸田 尚史 小野 澤章子
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

青森県下北半島出身者(昭和39年中卒者)の職業的社会化過程に関する追跡調査の一環として、現住地面接調査(有効面接数47)・質問紙調査(有効回答数125)を実施した。その結果、老年期移行期は都市周辺地域居住型と出身地域回帰型に分けられ、後者は対象者の50歳台時点での予測(40%以上)とは異なり少数であった。前者は、都市周辺地域社会内で生活基盤を形成してきたものが多く、再適応が比較的安定している一方で、都市不安定就労を継続し出身地域とも交流に欠ける者も少なくない
著者
細越 久美子 現代行動科学会誌編集委員会
出版者
現代行動科学会
雑誌
現代行動科学会誌 (ISSN:13418599)
巻号頁・発行日
no.13, pp.7-13, 1997

「カルチャー・ショック」という言葉は、留学や海外旅行などでの異文化体験に限らず、日常用語として用いられている。学術用語としての「カルチャー・ショック」は、Oberg,K. が1950年代に紹介したのが最初といわれており、その後異文化間接触研究の中で重要な概念として使われてきた。しかし、その概念の普及に比してこの用語が体系的に整理されているとは言い難い。ここで取り上げる Furnham,A.f. & Bochner,S. の Culture Shock : Psychological reactions to unfamiliar environments (1986,Routledge) は、異文化間接触に関連する諸研究を「カルチャー・ショック」の観点から整理した包括的な書の一つといえる。本報告では本書の主要部分を要約・概説すると共に、現代の異文化間接触研究への示唆について考察する。その際、筆者が留学生の異文化適応を素材として整理してきた、異文化間接触における「緩衝機能(buffering function)」(細越,1996a,b,1997)と本書の「カルチャー・ショック」の視点との関連についても論及する。 本書の第一部では留学、移民、国際協力、国際ビジネス、観光などの異文化間接触を総括的に論じ、その形態を滞在期間、目的、異文化への関わり方等の諸次元で分類している。第二部ではこうした様々な人の精神的健康や心理学的特徴について諸説している。第三部は、本書の中心である「カルチャー・ショック」について論じており、そこでは不慣れな環境の中でどう対処するか、(つまり Furnham らの見方では)自分を取り巻く関係をどのように説明するか、が取り扱われている。さらに「カルチャー・ショック」についての伝統的な説明(「カルチャー・ショック」は運命的なものであり、それを避けるには移住者の選別などが必要であるといった考え)から、最近の説明(その人を取り巻く様々な関係性の変化という観点)に至る研究が紹介されている。そして第四部としては、カルチャー・ショックへの対処方略、特にソーシャル・スキルや文化学習の方法が展開されている。さらに異文化環境におけるソーシャル・サポートの重要性についても指摘している。
著者
細江 達郎 佐藤 嘉夫 青木 慎一郎 細越 久美子 小野澤 章子 糸田 尚史
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

引退期における高齢者の非適応問題を、(1)団塊世代の追跡調査、(2)高齢者万引きへの集中的調査で確認した。(1)は、深刻な非適応への移行が予想される対象者の状況が確認された。周辺者の保護的受け皿・出身地への回帰可能性の有無が大きな要因であった。(2)については、高齢万引き犯の大半は孤独な高齢者による偶発的なものであり、高齢者を支援する仕組みの脆弱さによるものが多い。総じて、高齢者の非適応問題として、孤独死など重篤な状態や常習犯罪者に移行する前段階・中間形態などがみられる。こうした問題への対応は、行政施策のみならず、一般市民が高齢者と関わる手段の可能性の発掘が必要である。
著者
細江 達郎 横井 修一 PRIMA Oky Dicky A 細越 久美子
出版者
岩手県立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

盛岡市と周辺町村を対象とし、犯罪発生場面を物的・人的環境との動的関係から調査し、その発生抑制条件を明らかにした。そのことから地方における犯罪防止対策の基礎データを分析し、今後の研究の手がかりを提供した。本年度は具体的には以下について実施した。(1)GISによる犯罪分析窃盗犯とその地理的環境要因との関連分析を継続して行い、利用形態別の建物の割合と面積に基づいてクラスタ分析を行い、町丁目ごとに特徴を把握することが可能となった。その結果、対象地域は繁華街地域、繁華街・住宅混在地域・住宅中心地域に分類され、犯罪手口との関連が明らかとなった。これまで市町村(区)単位、交番管轄単位で分析されていたが、本研究によりさらに詳細な分析が可能となるだけでなく、防犯の面でも地域特性に応じた対策の検討が可能となった。(2)防犯意識向上のための地域安全マップ作製の効果に関する調査地域安全マップの効果は被害防止能力、コミュニケーション能力、地域への愛着心、非行防止能力の向上がある。それぞれの尺度を作成し、岩手県内農村部の一小学校児童を対象に調査を実施した。地域住民を含む地域安全活動に児童が参加し、実施前・後・3ヶ月後の能力の変化を調査し、安全活動の関与の効果について明らかにした。まとめとして、地方における犯罪発生は都市およびその周辺部においては罪種とその地域の建物利用形態との関係により発生の態様が異なり、農村部においては地域住民の安全対策への関与により犯罪発生・抑制に差異が出ることが確認され、今後、地方における犯罪防止はそれぞれの地域特性に応じたきめ細かい施策が必要とされる。3年間に渡る本研究はその基礎的な資料を提供するものである。