著者
佐藤 寛晃 田中 敏子 笠井 謙多郎 北 敏郎
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.353-358, 2009-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
4 4

49歳男性船長が, 船倉タンク内での廃液処理作業中に倒れた船員の救出に降り, 間もなく同様に倒れて死亡した. 船長の剖検の結果, タンク底面に残った廃液の吸引による溺死と診断された. 意識消失に至った経緯を明らかにするために船倉タンク内のガス分析を行ったところ, 酸素濃度は18.86〜19.31%, 二酸化炭素濃度は7.28〜9.07%で, その他に硫化水素を含め特記すべき濃度のガスは検出されなかった. したがって, 意識消失は二酸化炭素中毒によるものと考えられ, タンク内の廃液の発酵により高濃度の二酸化炭素が発生し, 死亡事故が発生したと結論づけた. 二酸化炭素が発生しうる環境においては, その危険性を十分に認識しておく必要があると考えられた.
著者
田中 敏子 佐藤 寛晃 笠井 謙多郎
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.217-223, 2019-06-01 (Released:2019-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1

被解剖者は高度肥満で猪首の20代女性である.ダウン症による精神発達遅滞,難聴,先天性白内障および緑内障による弱視などの障害を有していた.他院において緑内障の眼圧検査に際し,チオペンタール(TP) 350 mgを5分間で点滴静注した深鎮静が施された.静注後10分で検査は終了したが,医師がその場を離れた隙に呼吸が急速に悪化した.直ちに人工呼吸が施されたものの約20時間後に死亡し,医療過誤の疑いで司法解剖に付された.剖検上,特記すべき損傷や疾病を認めず,血清中のTP濃度は0.80 µg/mlであった.TPは超短時間作用型の静脈注射麻酔剤で,患者とコンタクトを取りつつ,少量を頻回に投与して最少量のTP投与にとどめるのが一般的である.この事例は,障害のためにコンタクトの取りづらさが予想されたものの,安易なTPの単回投与によって呼吸停止が生じ,医師不在のために蘇生が遅れたことが死因と判断された.
著者
佐藤 寛晃
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

重症度の異なる4群の出血性ショックモデルを作製し,同ショック時の肺障害の重症度と好中球の出現頻度との関係について検討を行った。出血後,炎症性サイトカインである tumor- necrosis factor(TNF)-αおよびinterleukin(IL)-1βのmRNAの肺実質における発現および肺静脈血中濃度が出血量の増加に応じて強く上昇し,出血5時間後の肺実質における好中球の出現頻度も増加した。また,機能的肺障害を反映するpartial pressure of arterial oxygen (PaO_2)およびalveolar-arterial oxygen tension difference (A-aDO_2)は出血量に応じて増悪し,器質的肺障害を反映する血清lactic dehydrogenase-3 isozyme (LDH-3)濃度は出血量の増加に応じて上昇した。出血5時間後では好中球の出現頻度と血清LDH-3濃度とに正の相関関係が認められ,出血性ショック後の肺障害の重症度と好中球の出現頻度との関連性を明らかにすることができ,出血量の増加に応じた炎症性サイトカインの上昇が一連の病態に関与することが明らかとなった。