著者
高森 稔弘 大栗 聖由 足立 良行 今井 智登世 佐藤 明美 原 文子 本倉 徹
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.179-183, 2017-05-25 (Released:2017-05-31)
参考文献数
21

視覚誘発電位(visual evoked potential; VEP)はパルス光や白黒の反転刺激による視覚刺激によって生じた網膜視覚細胞の興奮が視覚伝導路を介し,大脳の視覚中枢において誘発される電気的反応である。当院では,パターンリバーサルVEPを検査する際,光刺激装置としてブラウン管(cathode ray tube; CRT)を用いている。現在,一般市場では,CRTに替わり液晶ディスプレイ(liquid crystal display; LCD)が普及しつつあるため,VEPの刺激装置においても,CRTからLCDに切り替えられることが予想される。今回われわれは,使用モニターの種類がVEPへ及ぼす影響について検討した。刺激装置は,CRTと応答時間の異なったLCDを2台用い,それぞれ平均輝度を統一して,VEP測定を行った。LCDによる潜時は,N75,P100,N145のすべてにおいて,CRTと比較して有意に延長していた(p < 0.01)。振幅は,CRTとLCDとの間に有意な差は認められなかった。LCDは,黒色から白色へ変化するまでの応答時間が存在するために,CRTと比較して,潜時が延長したと考えられた。一方,振幅は平均輝度を統一すれば,CRTと同等の振幅がLCDでも記録可能である。モニターをLCDへ移行する場合,CRTと同様の基準値を使用することは不適切であり,使用するLCDごとに基準値を設定することが必要である。