著者
佐藤 荘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.158, no.4, pp.298-303, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)
参考文献数
9

マクロファージはその発見以来100年以上もの間,一種類の細胞しかないと考えられており,サブタイプが複数ある他の免疫細胞と比較すると日陰の存在であった.しかし近年,徐々に再度スポットライトが当てられ始めている.その中でも,最近のトピックの1つとして,M1・M2マクロファージが挙げられる.しかし,私たちはマクロファージはM1・M2ではなく更に詳細なサブタイプに分かれると仮定して研究を行った.その結果,アレルギーに関わるサブタイプはJmjd3により分化すること,またメタボリックシンドロームに関与するサブタイプはTrib1より分化することを突き止めた.これらの研究から,現在私たちは病気ごとの“疾患特異的マクロファージ”が存在している可能性を考えている.新たな疾患特異的マクロファージを探索するために,線維症に着目した.線維化初期に患部で増えるマクロファージについて解析を行ったところ,一部の細胞が線維症の発症に必須であることを突き止め,segregated nucleus atypical monocyte(SatM)と名付けた.さらに,この細胞に影響を与える非免疫系の解析,またその非免疫系の制御因子の研究を行ってきた.このように,私たちの体には未だ見つかっていない“疾患特異的マクロファージ”が存在しており,各々が対応する疾患が存在していると考えられる.これらの疾患特異的な細胞を標的とした創薬は,その疾患特異性の高さから,副作用の少ない創薬応用につながることが期待される.
著者
八巻 慶汰 室井 智博 鈴木 智也 加藤 雅貴 佐藤 荘志
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2016年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.138, 2016 (Released:2016-12-01)

海水で生きる硬骨魚類は、浸透圧の差から水分の吸収と塩類の排出とを常に行っている。この調節には多くのエネルギーを使っており、それは浸透圧ストレスとなっていると考えられる。好適環境水(塩分濃度が海水の約4分の1程度に調整された人工水)で飼育された魚の成長が早くなるのは、この浸透圧調整に使用されるエネルギーが必要なくなる分、成長に回されるためではないかと考えられている。しかし、実際に生理的観点からの研究はまだ行われていなかった。そこで私たちは、好適環境水飼育下での魚の生理学的な変化を研究し、魚の体内で何が起きているのかを明らかにすることを目的とした。結果として、好適環境水飼育下では浸透圧調節に対してのエネルギー消費量が大きく減少し、魚の受けるストレスも減少していることが明らかとなった。また、浸透圧調節を行う塩類細胞の開口部も閉じており、調節を行っていないことも証明できた。