- 著者
-
佐野 和子
- 出版者
- 京都大学大学院教育学研究科
- 雑誌
- 京都大学大学院教育学研究科紀要
- 巻号頁・発行日
- vol.67, pp.85-98, 2021-03-25
女性の職業的技能形成の主要なパターンである職業資格の有用性について、資格職に就く女性を対象に、職業移動、および賃金を従属変数とするパネルデータ分析を行った。その結果、資格職共通の特徴として同じ職に留まる割合が高く、無職後の復帰職となる傾向が強いことから、企業内部でのスキル形成を選択しない女性にとって、資格は安定的な<職>を保障することで継続的なキャリア形成に貢献している点が示された。実質的な収益に対しては、個別効果を取り除いた固定効果モデルによる分析では資格職の効果は見られない。但し対象を大学卒の女性に限ると医療・保健系資格職に、非大学卒の女性に限ると教員にそれぞれ作業職に対する賃金上昇効果がみられた。女性全員を対象にした分析では企業属性に賃金上昇効果はなく、企業内でキャリアを重ね収益を高めるパターンとは異なる、日本特有のスキル形成システムの縁辺に広がる女性のキャリアが明らかとなった。