著者
上橋 俊介 西本 浩 富塚 浩志 佐野 裕康 半谷 政毅
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.5, pp.446-453, 2022-05-01

フェージングによる信号強度低下を簡易な処理で軽減できる技術として,差動時空間ブロック符号化(DSTBC)伝送が検討されている.また,高い周波数利用効率を得るため,セル間で同一の周波数を用いる単一周波数繰り返しは,主にセル境界での同一チャネル干渉(CCI)が課題となる.一般に移動局では設置スペースなどの制約で多くのアンテナを搭載することは困難であり,送信側で複数アンテナを用いるDSTBC伝送ではより多くのCCIが観測される.このような環境では,従来のアレー信号処理による干渉抑圧では劣決定問題となるために十分な受信性能が得られない可能性がある.本論文では,少ない受信アンテナ数の条件においても動作可能なDSTBC伝送向けのCCI抑圧方式を示し,更に多数の干渉波が到来する複局同時送信システムへの拡張法も示す.計算機シミュレーションにより複局同時送信システムにおけるセル境界付近での干渉抑圧性能を評価し,受信アンテナ数の2倍を超える干渉波が到来する環境においてもチャネル行列の拡張,合成処理を行うことで決定問題に帰着させ,適切に干渉を抑圧可能であることを示す.