著者
荒牧 英治 増川 佐知子 森田 瑞樹 保田 祥
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2012-NL-208, no.9, pp.1-8, 2012-08-26

これまで言語学で高い関心を集めている問題の1つに人間の語彙数がある.数々の調査がなされてきたが,その多くは,理解できる語彙(理解語彙)の調査にとどまり,実際に使用する語彙(使用語彙)についてはどのくらいのものか,いっこうにわからないとされてきた.本研究では,ウェブ上の発言データを利用し,10万人という大規模な人数で使用語彙調査を行った.調査の結果,使用語彙は平均8,000語であることが明らかになった.さらに,同データを用いて,語のユーザ数の調査を行った.この結果,ユーザに偏りがある語や偏りがない語のリストが得られた.このようなユーザ数にもとづいたリストは本研究で初めて得られたものである.
著者
小池 一郎 小口 和代 保田 祥代
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.69-74, 2015-04-30 (Released:2020-04-24)
参考文献数
10

本症例は,23 歳の男性であった.勤務中,ベルトコンベアに頭部,体幹,左上肢を挟まれ左肩甲骨骨折,左多発肋骨骨折,左血気胸,両側肺挫傷と診断された.受傷1 日目,経口気管内挿管管理にて,保存的加療となった.受傷13 日目,挿管性と考えられる両側声帯麻痺を認めたため,気管切開術を施行し,カフ付側孔なしカニューレの装用を開始した.受傷17 日目,咽頭の唾液貯留や唾液誤嚥を認めたため,カニューレカフ上吸引ラインからの酸素送気による発声と唾液嚥下訓練(以下,送気訓練)を導入した.酸素1 ~ 3 l/min を使用し,喉頭侵入あるいは誤嚥した唾液を送気により吹き上げ,唾液嚥下を繰り返した.受傷34 日目,内視鏡や酸素送気の刺激で唾液分泌が増加し,送気訓練を継続的に実施するのは困難であったため,持続的酸素送気訓練から,間欠的に送気する方法に変更した.受傷42 日目,両側の声帯内転運動の改善と下咽頭から声門部の唾液貯留の減少を確認できたため,スピーチカニューレに変更した.受傷50 日目,スピーチカニューレを抜去した.経過中,送気訓練導入日である受傷17 日目と,スピーチカニューレ抜去日である受傷50 日目に随意的な唾液嚥下を計測した.評価方法は,本症例に「できるだけ何回も繰り返して唾液を飲むこと」を指示して,綿棒で口腔内を湿らせてから計測を行った.結果は,受傷17 日目と受傷50 日目それぞれにおいて送気なしに比し,送気ありでは随意的な唾液嚥下連続10 回実施所要時間の短縮を認めた.本症例は,送気により命令に応じた反復唾液嚥下回数を即時的に向上させ,唾液嚥下を繰り返すことで嚥下関連筋群を強化することができた.また,発声により声帯運動の廃用を最小限に抑えたことで,唾液処理の能力が改善した可能性が考えられた.
著者
中島 晶 久保田 祥 佐々木 克彦 柳沢 祐介 岸 恭弘
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
M&M材料力学カンファレンス
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<p>The subject of this paper is to calculate the residual stress occurred during heat treatments of the large forged steel using Finite Element Method (FEM). The analysis was carried out using a cylindrical FEM model of ASTM-A-470 used in rotor shafts for power stations. First, a heat transfer analysis was performed to obtain a temperature history, which is used to calculate material properties at varied temperatures. Then, using the temperature history, structure analyses were conducted considering both the creep deformation and the transformation plasticity. The residual stresses calculated by the structure analysis were compared with the value measured by experiments. As a result, the calculated residual stresses have the same tendency as the measured residual stresses when both the creep and transformation plasticity are considered. Therefore, the importance of both the creep and transformation plasticity for the structural analysis of the heat treatment of the large forged steels was confirmed. In addition, the effect of the cooling rate to the residual stress was also discussed.</p>
著者
保田 祥 小西 光 浅原 正幸 今田 水穂 前川 喜久雄
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.657-681, 2013-12-13 (Released:2014-03-13)
参考文献数
22

時間情報抽出は大きく分けて時間情報表現抽出,時間情報正規化,時間的順序関係解析の三つのタスクに分類される.一つ目の時間情報表現抽出は,固有表現・数値表現抽出の部分問題として解かれてきた.二つ目の時間情報正規化は書き換え系により解かれることが多い.三つ目のタスクである時間的順序関係解析は,事象の時間軸上への対応付けと言い換えることができる.日本語においては時間的順序関係解析のための言語資源が整備されているとは言い難く,アノテーション基準についても研究者で共有されているものはない.本論文では国際標準である ISO-TimeML を日本語に適応させた時間的順序関係アノテーション基準を示す.我々は『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ) の新聞記事の部分集合に対して,動詞・形容詞事象表現に TimeML の 〈EVENT〉 相当タグを付与し,その事象の性質に基づき分類を行った.また,この事象表現と先行研究 (小西, 浅原, 前川 2013) により付与されている時間情報表現との間の関係として,TimeML の 〈TLINK〉 相当タグを付与した.事実に基づき統制可能な時間情報正規化と異なり,事象構造の時間的順序関係の認識は言語受容者間で異なる傾向がある.このようなレベルのアノテーションにおいては唯一無二の正解データを作ることは無意味である.むしろ,言語受容者がいかに多様な判断を行うかを評価する被験者実験的なアノテーションが求められている.そこで,本研究では三人の作業者によるアノテーションにおける時間的順序関係認識の齟齬の傾向を分析した.アノテーション結果から,時間軸上の相対的な順序関係については一致率が高い一方,時区間の境界については一致率が低いことがわかった.