著者
金丸 理人 小泉 大 志村 国彦 笹沼 英紀 俵藤 正信 佐田 尚宏 安田 是和
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.487-493, 2013-07-01 (Released:2013-07-10)
参考文献数
18

症例は70歳の男性で,2008年9月,近医での血液検査にて肝機能障害を指摘され,精査目的に当科紹介受診し,膵管内乳頭粘液性腫瘍intraductal papillary-mucinous neoplasm(IPMN)と診断された.2009年6月,脾温存膵体尾部切除術(spleen-preserving distal pancreatectomy;SPDP)を施行した.術後第25病日に,ドレーンからの出血を認め,膵液瘻による胃十二指腸動脈瘤の破裂を認め,血管塞栓術を行い,術後第66病日で退院した.2009年11月(術後5か月),腹部CTを施行したところ,胃静脈瘤が描出された.上部消化管内視鏡検査でも穹隆部に孤立性の胃静脈瘤(Lg-cf,F2,Cb,RC(–))を確認できた.SPDP術後に脾静脈が閉塞し,孤立性胃静脈瘤が発生した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
田口 昌延 俵藤 正信 森嶋 計 清水 敦 佐田 尚宏 福嶋 敬宜 安田 是和
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.479-485, 2013 (Released:2013-07-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

症例は50歳女性.検診の腹部エコー検査で肝腫瘤を指摘され,精査目的に当院へ紹介となった.HBs抗原とHCV抗体は陰性,HBs抗体とHBc抗体が陽性で肝機能は正常であった.腹部エコー検査では肝S4表面に24×15 mm大の低エコー腫瘤を認めた.造影エコー検査(ソナゾイド)では早期動脈相で強く全体が濃染され,肝静脈への還流像が描出された.Kupffer相では欠損像を呈した.腹部造影CT,Gd-EOB-DTPA造影MRIでは動脈相で濃染され,門脈相でwash outされた.画像所見とoccult HBV感染から肝細胞癌が否定できず,肝S4亜区域切除術を施行した.病理組織学的には上皮様の紡錘形細胞と豊富な血管成分を中心とした腫瘍で脂肪成分はわずかであった.免疫染色でHMB-45,MelanA,αSMAが陽性で肝血管筋脂肪腫と診断した.肝血管筋脂肪腫は時に肝細胞癌との鑑別が困難である.
著者
俵藤 正信 関口 忠司 塚原 宗俊 永井 秀雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.1839-1843, 2000-11-01
被引用文献数
15

症例は70歳の男性.脾彎曲部の横行結腸進行癌によるイレウスにて入院した.経鼻イレウス管での減圧が不十分なため, 経肛門イレウス管を挿入し口側腸管減圧を行った.挿入時は何ら問題なかったが, 挿入後4日目に発熱と腹痛が出現し, 腹部レントゲンとCTで経肛門イレウス管による小腸腸間膜への穿通と診断した.持続吸引を中止し抗生物質の投与を行い, 経肛門イレウス管挿入後19日目に一期的根治術を施行しえた.穿通の原因は, 急速な減圧による口側結腸粘膜へのイレウス管先端の接触と持続吸引が考えられた.経肛門イレウス管は閉塞性大腸癌の術前の腸閉塞管理に非常に有効な方法であるが, その挿入時だけでなく, 挿入後においてもチューブトラブルのないように注意深い管理が必要と考える.