著者
倉内 伸幸
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.264-267, 1997-12-01
被引用文献数
1

チュニジアから収集したオオムギ300系統のうち, 10系統を栽培種と交配した.そのうち2系統は, 雑種第1代の種子稔性が半不稔性であった.同様に, 花粉稔性も半不稔性であり, 花粉母細胞減数分裂第一分裂中期で1つの4価染色体と5つの2価染色体が観察された.雑種第2代では可稔性と半不稔性が1 : lに分離した.この結果は, これら2系統が1個の相互転座をもつことを示している.転座染色体を同定するため, 既知の転座テスター系統と交配を行った.雑種第1代の花粉母細胞減数分裂第一分裂中期の染色体対合を観察した.第5染色体と第7染色体をもつ転座テスター系統とのF_1個体でのみ6価染色体が出現したことから, 転座染色体は第5染色体と第7染色体で起こっていることが明らかとなった.また, これら2系統のF_1個体の染色体対合は7つの2価染色体が観察されたことから, 同じ染色体上で相互転座が起こったと考えられる.
著者
倉内 伸幸 古庄 雅彦 寺島 竹彦 谷口 きよ
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.258-263, 1997-12-01
被引用文献数
1

1990年から1992年にチュニジアで収集したオオムギ遺伝資源について, 農業形質に関する一次特性および二次特性調査を行い, チュニジアオオムギの育種素材としての有用性について検討した.また, 収集地域別に形質の地理的傾斜があるかどうかを検討した.一次特性は, 300系統を調査した.供試系統は, すべて並性でかつ皮性であり, 芒が多く, 粒大であった.また, 出穂期, 成熟期, 稈長および穂長にはそれぞれ大きな変異がみられ, 日本品種と比較すると, 出穂, 成熟がやや遅く, 長稈で長穂の傾向が認められた.1000粒重は53.0gであり, 日本品種の35.4gに比べ種子が大きかった.地域別の農業形質の特徴をみると, 北部の系統は長稈で穂が短いのに対し, 南部の系統は短稈で穂の長い傾向が認められた.中部の系統は, 北部と南部の系統の中間を示した.二次特性は, 縞萎縮病抵抗性について, 158系統を検定し, 2系統が抵抗性を示した.縞萎縮病抵抗性を示した系統は北部および中部から収集した系統であった.うどんこ病抵抗性については, 149系統について調査し, 75系統が抵抗性を示した.北部, 中部, 南部から収集した系統から, うどんこ病抵抗性を示す系統が見出された.播性については206系統について調査した.135系統(66%)の系統がII以下の低い秋播性, 57系統(28%)の系統がIII, IVの中程度の秋播性で, 14系統(6%)の系統がVI以上の高い秋播性を示した.高い秋播性を示した系統は, チュニジア西部のアトラス山脈山麓から収集された系統であり, そこでは強い耐寒性と高い秋播性が要求されるためと推定される.以上のように, チュニジアオオムギ在来種から, 多収性および耐病性育種に利用が期待される系統が見出された.
著者
菊池 眞夫 高垣 美智子 倉内 伸幸 南雲 不二男 丸山 敦史 丸山 敦史
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

サブサハラにおける「低投入環境保全型」農業モデルを提唱するため、ウガンダにおいて農家調査、栽培試験、パピルス湿地開田試験、関連2次資料収集を行った。これら基礎データの分析により、陸稲作・水稲作の普及により稲作生産を飛躍的に拡大するポテンシャルは極めて大きく、サブサハラにおいて、環境に負荷を与えることなく「緑の革命」を達成する条件は整っており、それを達成することが農村の貧困解消にも貢献することが明らかとなった。