- 著者
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倉田 容子
- 出版者
- 日本近代文学会
- 雑誌
- 日本近代文学 (ISSN:05493749)
- 巻号頁・発行日
- vol.91, pp.127-142, 2014
本稿は、三枝和子のフェミニズム理論の今日的意義を明らかにすることを目的とする。従来、三枝のフェミニズムは「女性原理派」と目され、正当な評価を得てこなかった。本稿ではまずギリシア悲劇に関する三枝の評論を検討し、その論理展開における脱構築の手続きと「女性原理」の内実を明らかにし、従来の評価に修正を試みた。その上で、『鬼どもの夜は深い』における妊娠・出産の意味づけと共同体滅亡のプロットについて検討し、欠落としてのみ表象される亡霊的な「女性原理」の戦略性を明らかにした。さらに、こうした「女性原理」の概念を同時代の文脈において捉え直し、八〇年代に萌した身体の(再)規範化をめぐるフェミニズムの二つの潮流に対する三枝の位相を検証した。