著者
栗本 開 飯田 晶子 倉田 貴文 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.529-536, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
17

本研究は,人口減少基調にある東京都八王子市を対象に,生産緑地所有者への悉皆的なアンケート調査を通じ,所有者の生産緑地の維持・貸与意向と意向に影響を及ぼすと推察される因子,およびこれら意向の空間的傾向の把握を行い,今後の都市縮小時代における都市農地の維持方策の方向性を考察した.その結果,既往研究で指摘されていた個人属性とは別に,立地属性である地価と周辺農地率が独立して生産緑地の維持意向と正の関係にあることが示された.日本では集約型都市構造が志向されているという点に着目すると,特に都市農地が失われる危険性が高い,地価と周辺農地率がともに低いエリアにおいて,生産緑地の貸借の推進による農地維持が求められることが示された.反対に,都市農家の生産緑地の維持意向が高い傾向にある,地価と周辺農地率がともに高いエリアでは,画一的な居住誘導を進めるだけでなく,都市の構成要素として都市農地を認め,農地と住宅地の共存による良好な住環境の形成を図ることが今後の可能性の一つとして示された.