著者
村松 賢 別所 あかね 山崎 嵩拓 飯田 晶子 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.721-728, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17

今日の日本社会では、河川敷で行われる不法耕作は否定的に捉えられるのが一般的である。その一方で、不法耕作に対する海外における類似事象というべきゲリラ・ガーデニングについては、その公益性が認知され、肯定的に取り扱われている状況がある。この研究ではまず、中立的な観点にもとづく調査と検討を行うため、不法耕作に対し勝手耕作という術語を与える。この研究の目的は、先行研究によって示唆された、勝手耕作が備える福祉的機能を明らかにすることである。研究は、千葉市を流れる花見川の河川敷における事例を対象とした。その結果、勝手耕作が社会的弱者の生活の質を向上させる福祉的機能を持っていることと、活動の周囲に活動を許容している人が一定数存在していることが明らかになった。こうした事実にもとづいて、この研究ではまとめとして、勝手耕作が日本社会に存在することの意義と、今後その受容のために、都市計画が果たしうる役割を提示した。
著者
飯田 晶子 大澤 啓志 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.319-324, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
21

本研究では、南洋群島の旧日本委任統治領、パラオ共和国バベルダオブ島の3つの流域で行われた農地開拓とボーキサイト採掘を事例に、開拓の実態と現代への影響を分析した。農地開拓では、島内に4つの指定開拓村が設置され、1940年には合計1671人が2255町歩の土地に暮らし、主にパイナップルやキャッサバが栽培された。一方で、日本人が撤退した後65年を経た現代においても、当時の森林伐採と土地収奪的な営農による植生への影響、および、移入種Falcataria moluccanaによる固有種への影響が見られる。ボーキサイト採掘地は、島内2カ所に合計106ha設置され、島の一大産業であった。開拓面積は小さいものの、表土を剥がしとったために、採掘当時は多量の土砂が流出し、湿地と沿岸域に堆積した。また、パラオ人集落でも、土砂の埋立てと集落移転、インフラ設備の再利用、産業遺産の観光化など、少なからず日本の影響が見られる。開拓はいずれも水系を軸として流域を単位に進められており、開拓の影響は沿岸の生態系やパラオ人集落など、流域内の自然や社会に対して広域、かつ長期にわたる影響を与えている。
著者
飯田 晶子 山崎 嵩拓 樋野 公宏 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.468-473, 2023-12-11 (Released:2023-12-11)
参考文献数
11

本研究は、COVID-19パンデミック蔓延下に、誰が都市緑地を利用し、それが都市住民の健康と幸福にどのように関連したかを明らかにすることを目的とする。東京都在住の成人4,126人の横断データを用いて、二項ロジスティック回帰分析を行った。その結果、都市緑地を利用した人は利用しなかった人に比べ、主観的ウェルビーイングと身体活動量が向上していた。また同時に、利用者の属性によって利用する都市緑地の種類が異なっていたこと、及び都市緑地の種類によって主観的ウェルビーイングと身体活動量との関係の度合いが異なっていたことが分かった。様々な人々が都市緑地にアクセスできるよう、多様な都市緑地が混在する住環境づくりが重要である。
著者
飯田 晶子 野口 翠 大澤 啓志 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.1, pp.45-50, 2010-04-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究は、パラオ共和国バベルダオブ島を対象として、「構造」、「機能」、「変化」の三つの視点から、流域内を基盤とした集落の持続的土地利用について分析と考察を行った。その結果、第一に、「変化」の視点では、1920年代と2006年の集落分布の比較から、現存集落は37、消失集落は28、新規集落は8つあり、少なくとも約一世紀に渡り存続する集落を抽出することができた。第二に、「構造」の視点では、集落の立地環境は、谷型で川とマングローブ林の双方に近接し、海域と陸域双方への近接性が高いものが最も多く、かつ、このタイプでは、小流域の空間単位が、集落の領域の形成や分布に影響を及ぼしていることがわかった。第三に、「機能」の視点からは、集落周辺での細かな環境の変化を反映したモザイク状の土地利用の水平的分布、およびアグロフォレスト内の階層的で安定した土地利用形態が見られ、それらが、土地利用の持続性を支える重要な要因であると考察できた。
著者
飯田 晶子 大澤 啓志 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.319-324, 2011-10-25
参考文献数
20

本研究では、南洋群島の旧日本委任統治領、パラオ共和国バベルダオブ島の3つの流域で行われた農地開拓とボーキサイト採掘を事例に、開拓の実態と現代への影響を分析した。農地開拓では、島内に4つの指定開拓村が設置され、1940年には合計1671人が2255町歩の土地に暮らし、主にパイナップルやキャッサバが栽培された。一方で、日本人が撤退した後65年を経た現代においても、当時の森林伐採と土地収奪的な営農による植生への影響、および、移入種Falcataria moluccanaによる固有種への影響が見られる。ボーキサイト採掘地は、島内2カ所に合計106ha設置され、島の一大産業であった。開拓面積は小さいものの、表土を剥がしとったために、採掘当時は多量の土砂が流出し、湿地と沿岸域に堆積した。また、パラオ人集落でも、土砂の埋立てと集落移転、インフラ設備の再利用、産業遺産の観光化など、少なからず日本の影響が見られる。開拓はいずれも水系を軸として流域を単位に進められており、開拓の影響は沿岸の生態系やパラオ人集落など、流域内の自然や社会に対して広域、かつ長期にわたる影響を与えている。
著者
栗本 開 飯田 晶子 倉田 貴文 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.529-536, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
17

本研究は,人口減少基調にある東京都八王子市を対象に,生産緑地所有者への悉皆的なアンケート調査を通じ,所有者の生産緑地の維持・貸与意向と意向に影響を及ぼすと推察される因子,およびこれら意向の空間的傾向の把握を行い,今後の都市縮小時代における都市農地の維持方策の方向性を考察した.その結果,既往研究で指摘されていた個人属性とは別に,立地属性である地価と周辺農地率が独立して生産緑地の維持意向と正の関係にあることが示された.日本では集約型都市構造が志向されているという点に着目すると,特に都市農地が失われる危険性が高い,地価と周辺農地率がともに低いエリアにおいて,生産緑地の貸借の推進による農地維持が求められることが示された.反対に,都市農家の生産緑地の維持意向が高い傾向にある,地価と周辺農地率がともに高いエリアでは,画一的な居住誘導を進めるだけでなく,都市の構成要素として都市農地を認め,農地と住宅地の共存による良好な住環境の形成を図ることが今後の可能性の一つとして示された.
著者
坂本 真理 飯田 晶子 渡辺 貴史 横張 真
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.585-588, 2016 (Released:2017-03-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The study aims to identify the impacts of population decline on the nightscape of Nagasaki City, which has been acknowledged by tourists as one of three major nightscapes in Japan. In particular, the focus was given to hillside residential areas, which frame the landscape of Nagasaki. The study was conducted by following three steps procedure as a) visualizing the present nightscape by using ArcMap and ArcScene, b) developing scenarios on future population decline, and c) visualizing future nightscapes based on the scenarios. The scenarios developed are based on two hypotheses on the future population of Nagasaki as the decline will occur; 1) equally throughout the entire city, and 2) exclusively at the hillside residential areas because of their inconvenience especially for elderly people. The study identifies that the nightscape following the scenario 1 will become deteriorated compared to the present but still may maintain its character, while the scenario 2 will lead the nightscape to lose its identity. It is therefore concluded that taking measures to suppress depopulation of the hillside residential areas are indispensable to maintain the identity of Nagasaki’s nightscape.