著者
假野 隆司 土方 康世 清水 正彦 河田 佳代子 日笠 久美 後山 尚久
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.699-705, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

妊娠12週以内の初期流産を3回以上繰り返した,ANA,抗カルジオリピン抗体(ACA IgG, IgM)陽性習慣流産87例に柴苓湯療法を行い,抗体価(量)の推移を検討した。この結果,妊娠例(49例)の流産阻止率は63.3%,ANA陽性例(32例)の流産阻止率は65.6%,ACA IgG, IgM(fetal calf serum使用ELISA法)陽性(29例)は65.5%,両抗体陽性例(12例)は75.0%であった。ANAに対しては有意な低下作用は認められなかったが,ACA IgMに対しては有意な低下作用が認められた。文献的に柴苓湯の有効作用はTh1/Th2サイトカインバランス調整作用による液性免疫の抑制作用によると推察された。しかし,ACAが低下しなかった二生児獲得例が存在する事実から,構成生薬の人参,茯苓による低用量アスピリン療法と同様な血小板凝集抑制作用,さらに茯苓,蒼朮,沢瀉,猪苓による利水作用なども流産を阻止に関与していると推察された。
著者
假野 隆司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1171-1176, 2009-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
7

女性は心身状況不良時に妊娠すると,その後の妊娠経過に異常をきたし,流産や病的分娩によって母児の生命リスクが高まるため,そのような病況下では妊娠が成立しないように妊孕機能をマイナス制御する生体機構として,自律的に起動する自己防衛反応としての母性保護作用が存在する.心身症は現代の不妊症にとって重要な要因となった.不妊症と心身症との関連を自律神経失調症とうつ病との関連から,自院例におけるKupperman更年期不定愁訴とSRQ-Dとの相関から検討した.この結果,両症と卵巣機能不全不妊症には相関関係があることが明らかになった.このため現代の不妊症治療では心身症に対する対応が重要になり,薬物治療は漢方療法が主体的役割を担うと思慮された.