著者
高橋 浩子 日笠 久美 鎌田 周作 鎌田 ゆかり
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.252-261, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
21

不妊専門クリニックと患者情報を共有しながら,不妊患者に多い腎虚や瘀血の病態を考慮し,体外受精・顕微授精の採卵までは卵子の成熟を促し瘀血を改善する目的で補腎陰陽の八味地黄丸と駆瘀血作用の桂枝茯苓丸,採卵後移植までは,子宮内膜安定化の目的で温経・補血・駆瘀血の温経湯単独か桂枝茯苓丸を併用,移植後は安胎作用の当帰芍薬散を投与した20例を報告する。なお投与量については個々の状態に応じて調整した。20例中14例が妊娠反応陽性,うち10例が妊娠継続,4例は流産等。アンチミュラー管ホルモン値,子宮内膜厚,予測卵胞数,回収卵子数,受精卵数,初期胚到達数,胚盤胞到達数を,妊娠継続群と非妊娠群で比較したところ,子宮内膜厚以外で漢方併用後の数値の改善がみられ,回収卵子数と受精卵数で有意差を認めた。補助的な治療として,体外受精の段階にあわせた漢方薬は有効である可能性が示唆された。
著者
日笠 久美
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.393-399, 1994-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8

肝性脳症を示した肝硬変に対して, 大黄を中心とした漢方治療で, 症状の改善が見られた2症例を経験した。症例1は54歳, 女性。肝硬変, 及び慢性腎炎により腹水を発現して来院した。分消湯血鼓加減を投与して, 腹水は消失したが, その後に便秘と共に意識レベルが低下し, 高アンモニア血症を認めた。分消湯血鼓加減に大黄を徐々に10gまで投与したところ, 便秘が改善し, 意識レベルの正常化を認めた。症例2は68歳, 女性。肝硬変に高血圧を合併したが, 強いふらつき感とともに高アンモニア血症を認めた。七物降下湯15gとともに大黄末を5gまで徐々に増量するに比例してアンモニア値が低下した。上記2例とも大黄の増量で血中アンモニアは低下したが, アミノ酸組成には影響を与えなかった。大黄には潟下作用や腸内細菌への抗菌作用により, 間接的にアンモニアを低下させるとともに, 直接的にもアンモニア低下作用があると考えられる。また大黄の鎮静作用も脳症状の改善に作用していると考えられる。
著者
假野 隆司 土方 康世 清水 正彦 河田 佳代子 日笠 久美 後山 尚久
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.699-705, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

妊娠12週以内の初期流産を3回以上繰り返した,ANA,抗カルジオリピン抗体(ACA IgG, IgM)陽性習慣流産87例に柴苓湯療法を行い,抗体価(量)の推移を検討した。この結果,妊娠例(49例)の流産阻止率は63.3%,ANA陽性例(32例)の流産阻止率は65.6%,ACA IgG, IgM(fetal calf serum使用ELISA法)陽性(29例)は65.5%,両抗体陽性例(12例)は75.0%であった。ANAに対しては有意な低下作用は認められなかったが,ACA IgMに対しては有意な低下作用が認められた。文献的に柴苓湯の有効作用はTh1/Th2サイトカインバランス調整作用による液性免疫の抑制作用によると推察された。しかし,ACAが低下しなかった二生児獲得例が存在する事実から,構成生薬の人参,茯苓による低用量アスピリン療法と同様な血小板凝集抑制作用,さらに茯苓,蒼朮,沢瀉,猪苓による利水作用なども流産を阻止に関与していると推察された。