著者
横田 昌嗣 傳田 哲郎
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

固有種を中心に琉球列島産のガガイモ科植物の染色体数の算定を行った.中琉球固有のヒメイヨカズラ(ガガイモ科)の外部形態と分子系統樹を解析し,この種はこれまで考えられていたイケマ属ではなく,オオカモメヅル属に属し,遺存固有種的な性質を多く持つ種であることを示した.琉球列島内で著しい種内倍数性を示す琉球列島固有種のミヤコジシバリ(キク科)は,雑種起源であること,その起源は複数回あることを分子系統学的な手法で証明し,ミヤコジシバリの著しい種内倍数性は琉球列島の地史と深い関わりがあり,遺存固有種的な性質を示すことを細胞地理学的に示した.アカネ科のサツマイナモリ属とボチョウジ属の染色体数を算定し,琉球列島固有のアマミイナモリは近縁なサツマイナモリの倍数体起源であることを明らかにした.分子系統学的な解析により,アマミイナモリは日本および台湾産のサツマイナモリよりも系統的に古い時代に分化した遺存固有種であることが判った.琉球列島産のヒサカキ属の分子系統学的な解析の結果,中琉球固有のクニガミヒサカキは,日本産ヒサカキ属では最も遺存的な種であり,クニガミヒサカキと同種とする見解がある南琉球固有のヤエヤマヒサカキは,クニガミヒサカキとは明瞭に異なる独立種であること,中琉球固有のマメヒサカキは,ハマヒサカキから派生した新固有の分類群であることが判った.日本では沖縄島北部にのみ産するイワヒバ科ツルカタヒバと,その異名とされることもある沖縄島固有のコクラマゴケ,沖縄島から近年日本新産として報告されたミタニクラマゴケの形態を観察した.その結果,ミタニクラマゴケはコクラマゴケにすぎないこと,ツルカタヒバとコクラマゴケは連続的に変異し,現段階では区別できないことが判った.