著者
田中 美栄子 元山 智弘 池原 雅章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.601, pp.13-18, 2004-01-19
被引用文献数
2

本稿では,進化的アルゴリズムによるエージェント・シミュレーションによって投資戦略を自動生成するプログラムを作成し,実際の金融データに適用して得た結果について報告する.ここでは投資戦略を,金融市場という刻々と変化する環境に適応しながら進化するエージェントとみなし,他のエージェントの活動結果によって生じる市場価格の動きを相手として様々な戦略を実行し,結果の可否に応じてその時点での環境(価格変動)に対して最適な戦略に進化してゆくものとした.まず,1ティック前の価格変化の符号の情報をもとに1ティック後の変動の符号を予測することから始め,合計7ティック程度まで参照する履歴を増やして行くと,3〜4ティック位までは予測率が次第に向上して約70%の予測率に達するが,5ティック位で飽和してしまいそれ以上は向上しないことがわかった.そこで直前の価格変動の符号のみの情報(「差分符号」とする)に加えて,現在の価格水準が過去の価格の平均に比べて高めなのか低めなのかという情報(「相対価格」とする)を加味して学習を行ったところ,予測率は特に向上せず「差分符号」のみの場合と同水準であった.一方「相対価格」のみの情報で学習を行った結果の予測率はやはり70%前後にとどまった.このように複数の情報を必要に応じて取り込むことのできるプログラムに知識ベースを与えてゆくことによって,より的中率の高い戦略の自動生成への土台ができたことになる.