著者
藤井 浩之 道下 一朗 井澤 朗 三浦 元宏 梅田 研 松下 和彦 元田 憲
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.102-106, 2000-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

症例は,72歳,女性.1998年2月初旬より感冒様症状があり,近医で内服治療を受けていた.2月9日胸痛が出現し同医院を受診したところ,心電図上ST上昇を認め心筋梗塞の疑いにて当院に救急搬送された.心筋梗塞を疑い冠動脈造影を施行したが,異常所見を認めなかった.スワンガンツカテーテルにて心拍出量の低下および心臓超音波検査による壁還動のび漫性低下の所見を合わせ急性心筋炎による心不全(フォレスターIII度)と考え,昇圧薬と利尿薬による心不全治療を開始した.第3病日突然に心原性ショックに陥ったため,大動脈内バルーンパンピング法,経皮的心肺補助装置による補助循環を開始した.心機能の回復がなく,第5病日に人工呼吸器管理,さらに第8病日には腎不全のため透析を開始したが,第12病日に多臓器不全のため死亡した.ペア血清でインフルエンザA型(H3N2)のウイルス抗体価の有意な上昇を認めた.さらに剖検心組織からRT-PCR法によりインフルエンザA型ウイルスが検出された.97年度はインフルエンザが流行した.そのインフルエンザウイルス感染が原因で心筋炎を発症し激烈な経過をたどり,剖検心筋組織からウイルスが証明された症例を経験したので報告する.
著者
山村 至 越野 健 山村 真由美 宮保 進 布田 伸一 多賀 邦章 元田 憲
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.1513-1519, 1982-12-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

近年ウイルス学的診断技術の進歩により,多数のウイルスが心筋炎を起こしうると考えられている.そのうちでもコクサッキーB群がウイルス性心筋炎をきたす最も頻度の高い原因と考えられている.われわれは頻度としては少ないが,臨床症状,胸部X線写真,心電図,ペアウイルス抗体価の4倍の上昇より,パラインフルエンザウイルス心筋炎が最も疑われた1症例を経験したので臨床所見と経過を記載した.この際心筋生検,201Tl心筋スキャンを施行し,臨床的には経過は良好であったが心筋生検の組織所見でかなりの心筋の変性を認め,急性期を過ぎた時点での201Tl心筋スキャンで,なお異常所見を得た.その後201Tl心筋スキャンは正常化している.心筋炎からうっ血型心筋症への移行も唱えられている点を考えると,心筋炎の予後,follow upの点でこれらの2つの検査が有用であると思われたので文献的考察を併せて行い報告する.
著者
清水 賢巳 元田 憲 多賀 邦章 神川 繁 炭谷 哲二 布田 伸一 酒井 泰征 竹田 亮祐
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.759-766, 1983-07-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

重症筋無力症の心電図所見を検討した.対象は8~65歳の男女16例で,男女比は5:3,罹病期間は1ヵ月~17年,平均5.6年であった.病型はOsserman分類にて型3例,IIA型8例,IIB型3例,III型1例,IV型1I例であった.胸腺腫は4例(良性2例,悪性2例)に認めた.抗コリンエステラーゼ剤投与歴は0~7年,2例に60Co照射歴があった.心電図所見では,(1)正常例は16例中4例(25%)であり,異常所見として伝導障害1例(6%),ST・T変化8例(50%),不整脈6例(38%)を認め,高電位差,QRS群のterminal notchingは5例(31%)と高率に認められた.(2)心電図異常は臨床所見のうち,年齢,罹病期間,抗コリンエステラーゼ剤服用歴とは関係がなく,重症例,呼吸機能低下例で多彩であった.(3)経過中に巨大陰性T波の出現を認めた1例を経験した.本例の陰性T波の成因として自律神経系の関与が推定された.