著者
中尾 敬 光元 麻世 片山 香 宮谷 真人
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.7, pp.11-18, 2007

本研究では、職業選択時に記録される競合関連陰性電位(conflict related negativity, CRN)様成分が実際に競合を反映しているのかどうかを検討した。職業選択課題(例: どちらの職に就きますか? 「ダンサー、化学者」)、競合あり課題(例:有意味語はどちらですか? 「大学教授、大営教援」)、競合なし課題(例: 有意味語はどちらですか? 「たこ焼き屋、*****」)時の脳波を記録し、 CRN様成分を比較した。その結果、全ての条件においてCRN様成分が認められ、職業選択課題時の振幅が競合なし課題時の振幅よりも大きかった。また、CRN様成分の電源推定を行ったところ、職業選択課題時と競合あり課題時のCRN様成分の電源は共に補足運動野であった。このことから、職業選択時のCRN様成分は補足運動野における競合の解消過程を反映している可能性が示唆された。今後の研究で必要な条件設定について考察した。
著者
光元 麻世 岡本 祐子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.217-228, 2010

個人化が進むと同時に, 家族の親密さ, 絆の希薄さが指摘されている現代家族にとって, 家族の絆, つまり家族としてのアイデンティティは重要な意味を持つと考えられる。林・岡本(2003, 2005)は, 家族アイデンティティを「自分は家族の一員であるという感覚が, 斉一性と連続性を持って自分自身の中に存在し, またそれが他の家族成員にも承認されているという認識」であると定義している。本研究では青年が青年期前期に体験した家族内葛藤について調査し, 青年期前期の家族内葛藤と青年期後期の家族アイデンティティの発達レベルの関連性を明らかにすることを目的とした。その結果, 青年期における家族アイデンティティは, 青年期前期からの家族内葛藤を乗り越えることにより, 形成されることが示唆された。また, 家族内葛藤の収束と家族アイデンティティ発達にとって, 現在, 青年が親の対応についてどのように捉えているかが重要であることが示唆された。