著者
蔵永 瞳 片山 香 樋口 匡貴 深田 博己
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.8, pp.41-51, 2008

大学生を対象に, いじめ場面における傍観者の役割取得と共感が傍観者自身のいじめ関連行動に及ぼす影響について検討を行った。調査においては, 役割取得と共感の対象として, いじめ場面における加害者, 被害者, 観衆, 傍観者の4者を仮定した。243名を対象としたシナリオ法を用いた質問紙調査を行った結果, 役割取得は加害者, 被害者, 観衆, 傍観者の4者全てに対して生じていたのに比べて, 共感は加害者, 被害者, 傍観者の3者に対してのみ生じていた。さらに, 傍観者のいじめ関連行動には, 「はやしたて行動」, 「被害者援助行動」, 「傍観行動」の3種類があり, このうち「はやしたて行動」はいじめ場面においては生じないことが示された。これらの変数を用いて因果モデルを検討した結果, いじめ関連行動に対して影響を持つのは, 共感よりもむしろ役割取得であることが示された。また, 傍観者に対する役割取得は被害者援助行動を抑制, 傍観行動を促進し, それとは逆に被害者に対する役割取得は被害者援助行動を促進, 傍観行動を抑制することが明らかとなった。
著者
中尾 敬 光元 麻世 片山 香 宮谷 真人
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.7, pp.11-18, 2007

本研究では、職業選択時に記録される競合関連陰性電位(conflict related negativity, CRN)様成分が実際に競合を反映しているのかどうかを検討した。職業選択課題(例: どちらの職に就きますか? 「ダンサー、化学者」)、競合あり課題(例:有意味語はどちらですか? 「大学教授、大営教援」)、競合なし課題(例: 有意味語はどちらですか? 「たこ焼き屋、*****」)時の脳波を記録し、 CRN様成分を比較した。その結果、全ての条件においてCRN様成分が認められ、職業選択課題時の振幅が競合なし課題時の振幅よりも大きかった。また、CRN様成分の電源推定を行ったところ、職業選択課題時と競合あり課題時のCRN様成分の電源は共に補足運動野であった。このことから、職業選択時のCRN様成分は補足運動野における競合の解消過程を反映している可能性が示唆された。今後の研究で必要な条件設定について考察した。