著者
村田 成子 入来 正躬
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.157-163, 1974-05-31 (Released:2009-11-24)
参考文献数
19
被引用文献数
7 7

老人では暑さに対する反応より, 寒冷に対する反応がより顕著に障害され, その体温調節反応の特長は, 外来刺激感受性の鈍化から招来される反応発現の遅延であるとされている. しかし, この様な老人の体温調節反応を特長づける調節機構についての詳細な検討はなされていない.一方皮膚感覚については, 感覚点の分布密度が, 温点, 冷点, 痛点, 圧点などについて1920年代に詳細に検討されているが, その後は皮膚感覚についての研究は, 閾値の問題, 感覚神経の電気生理学的検討などが主な問題点とされて来ている. 皮膚感覚の加齢による変化についても, 痛覚閾値の変化などを検討した報告はあるが, 皮膚の感覚点の問題を検討した報告はみられない.老人の体温調節機構を解明して行く最初の試みとして, 老人の外来刺激感受性の鈍化に当然予想される皮膚自身での感覚受容の変化が, 皮膚感覚点頻度の増減の問題として把握し得る面があるか否かを検討するため, 平均年齢73±4歳の老人グループ30名と平均年齢26±5歳のコントロールグループ20名につき, それぞれ身体8ヵ所で冷点及び痛点の頻度を測定した. 得られた結果は次の通りである.1) 老人グループのコントロールグループに対する冷点及び痛点の頻度の減少は, 1ヵ所の痛点を除きすべて有意であった.2) 冷点の頻度は, 躯幹部で高く, 四肢末梢部で低い. 老人グループでは下腿部および足甲部で冷点の頻度の減少が大きい.3) 痛点の頻度の部位の差及び老人グループでの減少の部位の差は, 冷点ほど著明でないが足甲部はコントロールグループで痛点の頻度が低く, かつ老人での減少も顕著であった.
著者
入来 正躬 小坂 光男 村上 悳 村田 成子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.172-177, 1975-05-31 (Released:2009-11-24)
参考文献数
17
被引用文献数
3 2

65歳以上の男子943名, 女子1671名, 計2614名について腋窩温を測定した. 測定時刻は午後1時より4時の間, 測定時間は30分である. 同時に血圧, 身長, 体重を測定した. 被検者のうち, 独力で普通の日常生活の不可能なもの, 身体の異常を強く訴えるものを除き男子875名, 女子1595名, 計2470名について統計学的検討を行なった. この結果より結論づけることができるのは次の諸点である. 比較のために成人腋窩温についての田坂ら (1957)の報告を用いた.1) 老人腋窩温分布は正規分布に近い分布を示し, その平均値は36.66℃, 標準偏差は0.42℃である.老人腋窩温の平均値は成人腋窩温の平均値36.89℃に比し0.23℃低い.老人腋窩温の標準偏差は, 成人腋窩温の標準偏差0.34℃より大きく, 老人腋窩温の個人によるバラツキが成人のに比し大きいことを示している.2) 男子老人腋窩温は平均値36.55℃, 標準偏差0.41℃であるのに, 女子老人腋窩温は平均値36.72℃, 標準偏差0.42℃である. 男子老人腋窩温の平均値は女子のに比較して0.17℃低い. 成人の腋窩温では男子は女子より高いので, 老人と成人の男女差は逆の傾向を示す.3) 老人腋窩温と最高血圧, 最低血圧, 平均血圧との相関関係は有意ではない. しかし, 老人腋窩温は体型により左右され, 身長, 体重, 比体重と逆の相関関係が成り立つ. 比体重の大きい, すなわち肥満型の人ほど腋窩温が低い.なお本統計は, 独力で普通に生活している老人の日常生活にあらわれる時間的な一断面における腋窩温について述べたもので, 長期間臥床を保っているような条件の老人にこの数値をただちにあてはめることはできないかと考えられる.