著者
田中 将大 宇佐美 洵 入江 拓郎 川畑 隆司 門 良一
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 自然科学系列 (ISSN:09165916)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.27-42, 2012-03

次世代燃料電池材料として有力視されている水素吸蔵マグネシウムにおいて,プロトンの核 磁気共鳴(NMR) の実験を室温と液体窒素温度で行った.高温高圧下で水素を吸蔵させたマグ ネシウムと,市販試薬の水素化マグネシウムの二つを試料とした.室温での測定結果はどちら の試料も結晶相と固溶相の二つの相を有することを示した.液体窒素温度では両試料ともに予 想に反して液体気体で見られるような大きなスピン・エコーが観測された.ドライ・アイスや 冷凍庫で冷やした試料においても同様の現象が見られた.これは低温化することによって試料 に不可逆的な構造変化が起こり,気体水素が発生したものと考えられる.この現象は,吸蔵量 は多くても水素の放出が困難であった水素吸蔵マグネシウムの,燃料電池としての有用性に新 たなブレークスルーをもたらすことが期待される.
著者
清水 隆裕 入江 拓
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin School of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.26, pp.59-68, 2018-03-31

聖隷学園浜松衛生短期大学の教育理念には「人の生命は傷つき、病み、死ぬべき弱い存在である。自分と他人とが共有しているこの弱さの自覚と共感と互助こそ、人間理解と愛と感動の基本であって、それが看護の源泉である」と謳われていた。短期大学からクリストファー大学となり、その教育理念は建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」に包含される形になったが、弱さを人間観の根底に据えた教育理念は他大学と一線を画している。そこで弱さの自覚がなぜ看護の源泉になるのか考察した結果、弱さという自己の「不完全性」を認めることは、苦悩へと繋がるがそれを受け入れた先に、ケア者としての真の思いやりが醸成される。また弱さを受け入れることができれば、ケア者と病者が人間としての弱さを抱える者同士としての開かれた地平にあることができ、そこでの真の出会いと、静かな連帯によって「双方の可能性を開く」という意味が含まれていると考えられた。