著者
篁 宗一 清水 隆裕 猫田 泰敏
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.73-81, 2015 (Released:2015-04-10)
参考文献数
29

目的 本研究は,新聞紙のテレビ番組表から,自殺およびメンタルヘルスに関する情報を抽出し分析することによってテレビ番組による自殺報道の実態を明らかにすることとした。方法 一つの主要新聞紙から2004~2009年 6 月までのテレビ番組表の紹介欄から情報を抽出した。情報抽出においては,精神保健を専門とする研究者 2 人が独立に判断し,信頼性を保った。分析データは,テレビ番組表内の地上波 6 局の「番組名および紹介」の欄(最終の一面全体,以下紹介欄)を対象とした。「自殺と関連情報について事前に決定した選択基準に沿って抽出を行った後番組内のサブテーマの情報抽出を行った。また体験談の有無など,その他の属性および番組ジャンルや専門性についても情報を分類した。これら収集した情報データは質的な分類を行った他,件数および割合(%)を時系列および属性で比較した。また番組紹介の内容に関する傾向とメディアにおいて,一事例を繰り返し取り扱った番組の分析をそれぞれ行った。結果 期間中コンスタントに自殺を取り扱う番組がみられた。季節は春と秋,曜日は火曜日と水曜日の順であった。同一の事例が繰り返し10回以上報道されたのは 8 ケースであった。自殺のサブテーマとしてはいじめや殺人,うつ病であった。対策なども含み専門性の高い番組は47件(7.6%)で,504件(81%)の番組は専門性の低い番組であった。結論 自殺はテレビ番組で継続的に取り扱われている。番組の動向から,季節や曜日によって変動がみられた。いじめなど注目を集めやすいテーマが多く,専門性が低い傾向にあることが予測された。集中する報道による当事者の二次的な被害も考えられた。
著者
清水 隆裕 入江 拓
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin School of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.26, pp.59-68, 2018-03-31

聖隷学園浜松衛生短期大学の教育理念には「人の生命は傷つき、病み、死ぬべき弱い存在である。自分と他人とが共有しているこの弱さの自覚と共感と互助こそ、人間理解と愛と感動の基本であって、それが看護の源泉である」と謳われていた。短期大学からクリストファー大学となり、その教育理念は建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」に包含される形になったが、弱さを人間観の根底に据えた教育理念は他大学と一線を画している。そこで弱さの自覚がなぜ看護の源泉になるのか考察した結果、弱さという自己の「不完全性」を認めることは、苦悩へと繋がるがそれを受け入れた先に、ケア者としての真の思いやりが醸成される。また弱さを受け入れることができれば、ケア者と病者が人間としての弱さを抱える者同士としての開かれた地平にあることができ、そこでの真の出会いと、静かな連帯によって「双方の可能性を開く」という意味が含まれていると考えられた。
著者
豊島 由樹子 鶴田 恵子 長峰 伸治 熊澤 武志 鈴木 知代 酒井 昌子 樫原 理恵 野崎 玲子 黒野 智子 宮谷 恵 小平 朋江 藤浪 千種 清水 隆裕 藤本 栄子
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin School of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-10, 2019-03-31

本稿は、本学看護学部の2019 年度教育課程改定における活動内容の概要を記した。2012 年に教育課程変更を行って5年が経過したことや、教育職員免許法の改正により養護教諭課程の再課程認定に伴い、2019 年度に向けて看護学部教育課程の改定を行うことになった。2017 年度からカリキュラム検討委員会を中心に教育課程の検討を行い、2年間に渡って教育課程改定に向けて活動した内容をまとめた。2019 年度新教育課程としては、地域包括ケアシステムの推進に基づく社会の変遷にあわせた教育課程へと発展させるための学修内容の追加、本学の強みである充実した実習環境をもとに行われている臨地看護学実習を通して「生命の尊厳と隣人愛」に基づく教育理念を継続的に意識づけられるような教育課程を策定することができた。指定規則改正に伴う次の教育課程の改定に向けて、今回のプロセスが参考となることを期待する。